ブルース・リーを知る男・倉田保昭が悪役として躍動する『帰って来たドラゴン』。日本のカンフー・マスターにくぎ付け
◆古いフィルムの退色感が味わい深い 簡単な前知識だけでも相当に興味をそそられ、早速映画鑑賞開始。出だしは順調。古いフィルムの退色感が味わい深く、タイトル・ロールの漢字の書体も実にクール。ヨーロッパにいると、現地での「漢字人気」に驚かされますが、今滞在中のフランスで観ているせいか、エキゾチックさがより心地よい。 しかし…しばらく見進めて、私はちょっとたじろぐ。まず主役のドラゴンを演じるブルース・リャン。髪型、芝居、立ち振る舞いから何から、「古くない?!」。(笑) 昭和70年代の日本で流行したテレビドラマそっくりで、学帽被って口に葉っぱくわえ、口笛吹いてそうな雰囲気。カンフーさえできれば森田健作主演でも違和感なし。この作品はコメディとして作られているので、やがて子分になる2人のおどけ役が可愛く、連発されるギャグが古すぎて笑えます!! しかし…と私は思いいたる。「もしかしたら、こういうカンフー映画作りのスタイルが当時の日本人の目にかっこよく映り、マネをして日本の学園物が作られたのかも?」 敵役で出てくる美人女優の雰囲気、ヘアスタイルや化粧も、当時の日本映画やドラマの女優そのまんま(笑)。ちなみに志穂美悦子さんもこの頃に格闘シーンができる女優さんとしてブレイク。ちょっと動画検索して見たけどやたらかっこいいです!
◆この世界観がまた楽しい そんな風に慣れてくるとこの世界観がまた楽しい。「男の世界」全開で、「見せたいのはカンフーだけだぜ」と言わんばかりの、ステロタイプなキャラクターやストーリー展開が、だんだん気持ちよくなってくる。構成が複雑なフランス映画も素敵だけど、アクション一辺倒がまた、新鮮。『燃えよドラゴン』のなかに「Don't think,feel 」との名言があるそうですが、まさにその哲学そのまま。 妙に納得してきたところで遂に出てきました、敵役のブラック・ジャガー役、倉田保昭さん! あのまっすぐな眉が何とも素敵で、一度見たら忘れない強い顔。はっきり言って、主人公のドラゴン(ブルース・リャン)よりハンサム。主人公には親しみも必要だから、美しく強すぎた倉田さんには悪役がハマったのでしょう。最強の敵が出てきてこその格闘技映画ですものね! さて、私は格闘技に関しては素人なので、一般人の感想にすぎませんが。中心となるカンフーは今のようにCG技術などを使わない、生の格闘なんでしょう。ジックリ見ているほどに体にずんと来て、何回も見返したくなります。倉田さんの得意技らしく、Gメンでも見た記憶があるんだけど、狭い壁の間に両手両足をつき、跳躍だけでよじ登っていく技は、見ていてとてもスリリング! 飛ぶのも、走るのも、技を決めるのも、演技の時に直前で止めて互いにケガしないようにするんでしょうが、ヌンチャク使いなんて怖い位の迫力です! 本当に間違って当たったら、絶命することもあるんではと思うほどに、カンフーのすごさを感じます。
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