島根に浮かぶ「大根島」の呼び方は「だいこんじま?だいこんしま?」地元民も分かれる読み方の“正解”を徹底調査
島根・松江市の中海に浮かぶ「大根島」。その読み方・名前について、「だいこんじま」なのか「だいこんしま」なのか使う人によって分かれている。そんな現状がある中で、実際はどちらが正しいのか現地で取材した。 【画像】一つだけ変更されない標識
当初の名前がなまった説
まずは、大根島にある松江市八束町の八束公民館に向かった。島で生まれ育ったという池田均館長は、幼い頃から「だいこんしま」と言っていたそうだ。そもそもなぜこの島に「大根島」という名前がつけられたのだろうか。 池田館長は島の名前の由来について、地域の歴史書の一つで733年に編さんされた「出雲風土記」の伝承を紹介した。この中で「大きなワシが海のタコをくわえて飛んできて、この島に降り立った。それで当初は『たこしま』と言っていたが、『たこしま』が「多久島(たくしま)」に、それがさらになまって『大根島(だいこんしま)』となった」という説を挙げた。 さらに、大根島で栽培されている薬用人蔘(ニンジン)が、かつては門外不出の特産品で、大根島が産地であることを隠すためにあえて「大根」を付けて「だいこんしま」と呼んだという説を挙げた。 一方、公民館の隣にある松江市八束支所で聞いてみると、島の出身ではない職員は「『だいこんじま』と呼んでいました。ただ、職員になってからは『だいこんしま』と言っています」と話す。「じま」と読んで修正された経験もあるという。 島の出身である市の職員は「『だいこんしま』ですよ。やはりそれは訂正していかないといけないと思うし、『しま』で統一です」と、当然のように「しま」の呼称を主張した。 市の教育委員会が発行している小学生用の副読本や、離島に関する調査・研究や情報収集をしている日本離島センターが発行した本でも、大根島は「だいこんしま」と表記されていた。
県が設置した標識も2通りの表記が
「しま」と「じま」の両論が出揃ったところで目にしたのが、島内にあるクラフトビールの醸造所の看板だ。施設名を門脇淳平代表に聞いてみると「ここは『だいこんしま』醸造所です」と答えてくれた。 門脇代表によると施設名の「島」の読み方は濁らないが、醸造所で働くスタッフに聞くと「だいこんじま」と答える人もいた。スタッフも指摘されて初めて「だいこんしま」だと知ったという。醸造所でも「しま」と「じま」が混在しているようだ。 さらに調査を進めると、県道に設置された案内標識には「Daikonjima(ダイコンジマ)」とローマ字で書かれていた。 しかし他の標識は「Daikonshima」と「しま」を採用していた。いずれも島根県が設置したものだが、なぜ2通りの読み方が存在するのだろうか。 県の説明によると、元々多くの標識で「じま」が採用されていたが、2014年に観光案内板や標識の外国語表記を統一する指針が観光庁から示され、県もこれに基づいてローマ字表記を修正。県道の名称である「大根島(しま)線」が濁らないことから、ローマ字表記も合わせたが、一つだけが変更されないまま残っているのだという。 次に大根島郵便局を訪ねると、吉岡聡局長は「『だいこんじま』郵便局です。その時の局長が、その言い方だったのかもしれません」と答えてくれた。1914年に今の場所に移転し、その時に「だいこんじま郵便局」という名前が付けられたという。