親の遺品から、私名義の「通帳」が見つかりました。毎年50万円で「500万円」貯めてくれていたようですが、受け取って大丈夫ですか? 初めて預金の存在を知ったのですが、贈与が完了しているなら“申告不要”でしょうか?
親が残した遺品の中から自分名義の通帳が見つかったとき、うれしく思うと同時に「これはそのままもらっていいのか?」と疑問に思うかもしれません。 しかし、贈与が済んでいるものと考えて税務申告をしないで受け取ると、後に税務署から指摘を受けるかもしれません。理由は「名義預金」と見なされる可能性があるからです。 本記事では、名義預金についてリスクと回避策を紹介します。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
贈与が成立していれば年間50万円の贈与には贈与税はかからない
前提として、もし年間50万円ずつ、10年で500万円の贈与が正式な贈与として成立していたのであれば、贈与税は課税されません。贈与税には年間110万円の基礎控除があり、この範囲であれば贈与税はかからないためです(ただし、ほかの贈与と合わせて年間110万円を超えた場合を除く)。 ■例外:相続開始3年以内の贈与分には相続税がかかる 贈与が成立していたケースでも注意が必要な場合があります。相続開始3年以内(2024年1月以降分は7年以内)の生前贈与は相続とみなされ、相続税が課されるというルールがあります。 最終の贈与から死亡まで3年以上たっているならば、相続税はかかりません。しかし、死亡の前年まで毎年50万円の贈与が行われていたならば、3年分の150万円には相続税がかかります。 贈与が成立していても相続税が課されるかどうか、年数に注意して適切な対応が求められます。
名義預金とは? 贈与は成立していない?
名義預金とは、他人の名義を使って実質的に自分が管理する預金のことです。例えば、本ケースのように、親が子どもの名義で通帳を作り、その口座に親が自由にお金を出し入れしていた場合が該当し、そのお金は親の財産とみなされます。 贈与とは財産を無償で相手に与え、受け取った側がその財産を自由に使えるようになった状態のことをいうため、親が亡くなってから預金の存在を知った今回のケースでは、名義預金に該当し、贈与は成立していないと考えられます。そのため、亡くなった後に、名義預金のお金を受け取ることは相続にあたり、500万円全体に相続税の支払い義務が発生します。 もし、適切な税務申告をせずに税務署の指摘を受けた場合は、本来支払うべきだった相続税に加えて、延滞税、過少申告加算税といったペナルティを負わなければなりません。 通帳を見つけたタイミングで税理士に相談して、修正申告と納税を行うなど、適切な対応を行いましょう。