毎年83万世帯で発生するアタマジラミ、効果的な予防法と駆除法は、どうやって移るのか
予防法と駆除法は? 殺虫剤以外の方法はある?
ポラック氏によれば、アタマジラミの寄生を防ぐ確実な方法は、頭をそることしかない。「髪の毛がなければ、アタマジラミが頭皮にとどまることはできません。ウサギがボーリングの玉に乗ったらそうなるように、シラミは頭皮から滑り落ちてしまいます」 そんな劇的な髪型はさておき、一番の予防法は頭と頭の接触を避けることだ。「大多数の人はアタマジラミに寄生される心配はありません」とポラック氏は述べている。たとえ不運に見舞われても、幸い、効果的な治療法がたくさんある。 最初のステップは、シラミの卵だけでなく、生きているシラミがいるかどうかを確認することだ。もしシラミがいたら、髪にコンディショナーを塗ってから、アタマジラミ駆除専用のくしでよくとかし、虫と卵を取り除くことをポラック氏は勧めている。 これを1度行えば、かなりの数が取り除かれるはずだが、生きたシラミが見つからなくなるまで、数日おきにくしでとかすよう氏は助言している。シラミが見つからなくなって2週間たてば、もういないと思って間違いないだろう。 髪にくしが通りにくい場合やシラミがなかなかいなくならない場合は、日本で市販されているものではシャンプー、パウダー、ローションタイプの市販のアタマジラミ駆除剤が効くはずだ。シャンプーとパウダータイプの駆除剤には、シラミの幼虫と成虫をまひさせて殺すピレスロイド系の殺虫剤であるフェノトリン(商品名スミスリン)が含まれている。 しかし、一部のアタマジラミがピレスロイド系の薬に耐性を獲得し始めていると、米マサチューセッツ大学アマースト校の毒性学名誉教授ジョン・クラーク氏は言う。 以来、新しい選択肢が市場に登場している。例えば、米国ではスピノサドという殺虫剤がいくつかの一般的なアタマジラミ駆除剤に採用されており、米環境保護局(EPA)は、安全で効果的な治療法と見なしている。今のところは……。クラーク氏も述べているように、人とシラミの軍拡競争はいつまでも続くだろう。 「誰もが同じ製品を使い、何度も使用すれば、突然変異によって生き残ることができるようになったシラミが現れるのは時間の問題です」と氏は言う。 殺虫剤を避けたい人もいるだろう。クラーク氏はジメチコンを含む製品を勧めている。日本で市販されているローションタイプの駆除剤はこれだ。ジメチコンは殺虫剤ではなくシリコーンの一種で、虫の気管をふさいで窒息させる。安全で非常に効果的であることが示されており、生きたシラミと卵の両方を90%以上殺せるという研究結果もある。 熱も殺虫剤を使わない選択肢の一つだが、クラーク氏はヘアドライヤーの使用について、「シラミが死ぬ前に、頭皮をやけどする傾向があります」と注意を促している。 ほかの民間療法についても、専門家は警告している。クラーク氏によれば、マヨネーズやワセリンは一部のシラミを殺せるかもしれないが、効果は認可された殺虫剤に遠く及ばないという。ましてや、灯油やガソリンを塗るといった過激な方法は大惨事のもとだ。 幸いなことに、アタマジラミがしつこく寄生し続ける確率はかなり低い。「たとえシラミが見逃されたり、治療を受けなかったりしたとしても、多くの場合、シラミは少しずつ勢いを失っていきます」とポラック氏は話す。
文=Leah Worthington/訳=米井香織