「石丸方式」で兵庫県知事に返り咲いた斎藤元彦氏 支援者たちのSNS使った“推し活”の威力
■石丸伸二氏の選挙参謀に相談 県議会から不信任決議を突きつけられ、斎藤氏は9月30日に失職した。斎藤氏が選挙プランナーの藤川晋之助氏に電話をかけたのは10月初めのことだ。藤川氏は、7月の都知事選で2位に躍進した前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏の選挙を手掛けた人物だ。 藤川氏は斎藤氏からの電話の内容をよく覚えていると話す。斎藤氏は、こう相談してきたという。 「明日から朝、駅前で立ちます。けどスタッフは2、3人で、何からやればいいのか。ひとりぼっちです」 斎藤氏は、10月から兵庫県内の駅前で「朝立ち」を始めた。スタッフもつけず、一人で駅前に立ってあいさつし、当初は立ち止まる人もほとんどいなかった。JR加古川駅前で朝立ちする斎藤氏の取材に行った際は、大声で「元県民局長は亡くなってる!」と抗議をする人もいた。斎藤氏は、こう話していた。 「(県民から)冷たいというか、刺すような視線がたくさんあった。すごい勢いで内部告発の対応にクレームをつけてくる人がいて、心が折れそうになる」 ■SNSの情報拡散で変わった風向き 風向きを変えたのはXやインスタグラムといったSNSでの情報拡散だった。都知事選で知名度がなかった石丸氏が大きく躍進したのと同じ戦術だ。 県知事選がスタートすると、斎藤氏の演説会や陣営に、ブルーのTシャツを着たボランティアが増え、首からQRコードのカードをかけ、スマートフォンで読み取るとSNSにすぐに投稿できるのだ。斎藤氏は集まった人たちと記念撮影に応じ、その情報が拡散される。SNSで拡散するよう呼び掛けていたボランティアの1人に聞くと、 「デジタルボランティアです。どこにいても斎藤さんの応援ができます」 と話した。このデジタルボランティアが約400人まで広がり、街頭演説や斎藤氏を応援する動画などをSNSで拡散していった。 記者は文書問題が発覚した3月末に斎藤氏のXをフォローしたが、このときのフォロワーは2万人程度だったと記憶する。だが、当選を決めた11月17日には10倍の20万人を超えるほどに急上昇していた。 ネットには、斎藤氏の疑惑は、斎藤氏を陥れるためのウソで、斎藤氏は県議会やマスコミにはめられた被害者だと根拠不明に断じる情報が多くある。しかし、それらの情報が拡散されるなかで、「悪役」だった斎藤氏のイメージは、「正義の人」に変わっていった。