「石丸方式」で兵庫県知事に返り咲いた斎藤元彦氏 支援者たちのSNS使った“推し活”の威力
パワハラや「おねだり」などの疑惑が告発され、県議会が全会一致で不信任を決議して失職した斎藤元彦前知事が、11月17日の兵庫県知事選で再選を果たした。斎藤氏が当選した原動力は間違いなく、SNSを駆使した選挙戦術にあった。 【写真】SNSを使った選挙戦術で都知事選で躍進したのはこの人 選挙最終日の16日、斎藤氏は最後の演説を「グランドフィナーレ」と呼び、神戸で最もにぎわう三宮駅前を選んでマイクを握った。 記者は1時間半ほど前に現地に到着したが、すでにSNSのXやインスタグラムで演説を知った人たちが集まり始めていた。そこからみるみる人が増え、車道にも人があふれ出て、駅前に到着するバスがなかなか動けないほどになった。商店街のアーケード2階部分をつなぐ陸橋の上にも人が殺到し、重みで陸橋の中央部が少しゆがみ始めた。 「橋がたわんでいるので、通行禁止です!」 と商店街やビルのスタッフがメガホンで絶叫するが、人の多さで声が届かず、なかなか通行を止められないほど。 斎藤氏が到着した午後6時ころには、集まった人は1千人を超すほどになった。交差点の周囲すべてが人で埋め尽くされ、警察官が通行する人のために、「う回路」を案内せざるをえない状況だった。 かつて同じ場所で、安倍晋三元首相が2019年の参院選で自民党と公明党候補の応援のために演説したときも、同じくらいの人が集まっていた。だがこのときは自民、公明の組織力を使った「大量動員」があった。 斎藤氏には組織的な支援はない。ネットには「サクラ」を疑う情報も流れていたが、斎藤陣営は、 「サクラでこれだけの人を集められるわけがない」 と愚痴っていた。 斎藤氏が選挙カーの演台に上ると、「斎藤さーん」「がんばれー」と声が響く。そして、多くの人が一斉にスマートフォンを取り出し、カメラを斎藤氏に向けて動画撮影を始めた。 斎藤氏の選挙取材で何度もあった男性は、こう話してくれた。 「自分が撮った動画を他の斎藤さんのファンにも提供して、それぞれが切り抜き、ショート動画などでアップする。今ではネット上で親しくなった20人くらいにSNSで渡している。20人の中には北海道の人もいて、有権者は自分しかいないはずです。でもそうやってSNSで展開すれば、全国の人が斎藤さん支持を有権者にアピールすることができます」 マイクを持った斎藤氏は、感に堪えない表情で演説を始めた。 「私が選挙戦を始めたときは1人でした。これだけ多くの方に集まってもらい、信じられない感じです」