空飛ぶ「クロネコヤマト」自社便で運ぶ荷物の中身、導入費用は130億円、スピード勝負の費用対効果
深夜3時過ぎの羽田空港。第1ターミナル隣の貨物地区に、クロネコマークを付けた航空機が到着した。北九州から飛来した機体には「YAMATO TRANSPORT」の文字が刻まれている。宅配便大手・ヤマト運輸の貨物専用機だ。 【写真で見る】深夜の羽田空港に到着したクロネコマークの貨物機。中からかまぼこ型のコンテナが取り出された 停止した機体側部のドアが大きく開き、かまぼこ型のコンテナが姿を見せる。コンテナは大型のリフトで引き出され、次々と運ばれていった。 トラック輸送が中心のヤマトだが、今年4月からJALグループと連携して貨物機を飛ばしている。8月には羽田に就航。新千歳、成田、北九州、那覇を結び、現在は1日14便を運航する。なぜ本格的に貨物機での輸送に乗り出したのか。そして、一体何を運んでいるのか。
■生鮮品、アパレルが空を飛ぶ 貨物機が運ぶ荷物は多種多様。北海道発では生鮮品が多い。奥尻島産のあわび、利尻昆布などの特産品や、アスパラ、とうもろこし、トマト、メロン、長いもなどの農産物もある。一部は自治体などと連携した取り組みだ。 宅急便が主力のヤマトは、小口の荷物を中心に取り扱う。だが貨物機のサービスは法人向けが中心で、生産者から荷物を預かり、数十箱などまとまった量を運ぶケースが多い。農産物は東京・大田市場まで届けたり、スーパーの物流センターへ納品している。
食品以外では、北九州から半導体や自動車関連の部品なども運んでいる。ガスが充填されているエアバッグや航空機の部品、内部に燃料が含まれる部品などの危険物もある。半導体関連は成田で国際線につなぐケースが多いという。 メリットはやはり圧倒的なスピード、そして宅急便のネットワークとつなげられる点だ。新千歳―羽田間をダイヤ上は約2時間で結ぶため、産地で朝に採れた生鮮品を夜に航空機で運び、翌日昼から夕方にかけて飲食店などに届けることも可能だ。
ちなみに通常の宅急便で荷物を送る場合、北海道―東京間、東京―九州間はそれぞれ2日後の到着予定となっている。 首都圏から地方へ飛ぶ荷物もスピードが武器だ。ECで追加料金を払えば早く届けるサービスなどで、個人が購入するアパレルが多い。「購入後すぐにほしい」という要望に応えられるようになった。 また、航空輸送は短時間で振動も少ないため、荷物の負担を減らせるメリットもある。今年8~9月には福岡県産(JA筑前あさくら、JAふくおか嘉穂)のイチジク「とよみつひめ」を空輸し、首都圏のスイーツショップ「キルフェボン」の5店舗でタルトに使うトライアルを行ったが、通常よりも商品の傷みが少ない状態で届けられたという。