激論「サステナブル情報開示」、セーフハーバーの導入で企業が溜飲を下げたワケ
諸外国の後追いが、逆に有意な立ち位置に?
令和6年12月2日開催の第5回WGでは、本WGの2つ目の主要論点となる保証制度について議論された。 とりわけ注目されたのが、事務局から示された5つの主要論点のうち「サステナビリティ保証の範囲・水準等」で取り上げられた「保証の範囲」に関するものである。 段階的な拡大はやむをえないとしても、諸外国の制度と見劣りしない制度にすべき、といった意見に加え、国際競争力確保の観点から、国際的に日本の情報開示の信頼性が劣ることのないタイミングでの制度設計に注力すべき、とした意見が出された。一定期間とはいえ、Scope1・2のみに限定した場合は範囲として狭い、との指摘もなされたのだ。 他方、最終的な保証範囲や時間軸を含めた制度導入のロードマップを示したうえで、企業の体制構築の準備を促していくべき、との意見も出された。 この結果、方向性としては企業などの準備期間を考慮したうえで、上場企業に一律に対応を課すのではなく、時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業から段階的に導入する案を基本とする。そのうえで、諸外国の規制動向のほか、保証に関する検討状況などを注視しながら柔軟に対応していく、との方針が示された。 とりわけ諸外国の動向や規制の後追いだとする指摘もあるサステナビリティに関する日本の取り組みであるが、足元のEU内での動きに濃淡が出始めた。 過度にサステナビリティを追及しようとした企業の生産活動に陰りが生じるなど、サステナビリティにおける規制強化が域内の企業育成や経済成長に必ずしも直結するとは言い切れない状況にもなりつつある。 結果としてサステナビリティ開示に関して諸外国の後追いとなった日本ではあるが、拙速に諸外国の規制へのコンバージェンス(収束)へ向かうのではなく、先行する諸外国の動向も見据えたほうがよさそうだ 論点整理を進めるうえで必要な情報を十分に得ながら議論を進めることが可能となった点は、今後の舵取りに有利な方向に働くことだろう。 本WGでは比較的前広な意見形成がなされ、企業側の足元の動きや企業から寄せられる開示に際しての懸念材料なども十分に取り上げられ検討に加味されている、柔軟な意見形成がなされている様子がうかがえるところは、企業側にも安心材料となっているのではないだろうか。
執筆:NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長 大野 博堂