激論「サステナブル情報開示」、セーフハーバーの導入で企業が溜飲を下げたワケ
本WGの設置とこれまでの議論とは?
本WGでは、サステナビリティ情報に係る昨今の国際的な動向や要請を踏まえ、情報の開示やこれに対する保証のあり方について検討を行うこととされ、以下が論点となった。 ・投資家が中長期的な企業価値を評価できる状況の構築 ・投資家向けに提供する情報の信頼性確保 企業が投資家に自社のサステナビリティへの取り組みに関する情報を正確に提供するうえでは、開示情報の真正性をいかに担保するかがカギとなる。 一方、過度に厳格な開示基準や罰則を定義した場合、企業側のサステナビリティに関する活動そのものを阻害したり萎縮させたりしてしまう可能性も否めない。 そこで、CSRDなどの海外サステナビリティ開示基準に関する免除事項の存在などを念頭に、第3回WGまでの議論を通じ、委員の意見は「サステナビリティ情報については、重過失でなければ虚偽記載などの責任を負わないとすることも、十分検討に値するのではないか」といったものに集約されてきた。 これを受け第4回WGでは、サステナビリティ開示基準に関し、事務局より以下の3点が論点として提示された。 (1)基準適用初年度における経過的措置として二段階開示を認め、有価証券報告書の訂正による方法を採用する (2)CSRDなどの海外サステナビリティ開示基準に関する免除事項に対応するための具体策海外向け開示を行う際に日本でも同様の情報が得られるように開示を行える制度を用意する (3)特定の状況下、または一定の条件などの基準を満たした場合には、違反や罰金の対象にならないとされる範囲を指すセーフハーバーを導入する 経過的措置を論じた(1)の二段階開示については、議論の過程では半期報告書での訂正も取り上げられたものの、結果的に有価証券報告書の訂正による対応に集約されたようである。
セーフハーバーの導入で企業が溜飲を下げたワケ
また、開示企業が最も懸念する違反や罰則の適用については、セーフハーバーの導入で落ち着く見通しとなった。 セーフハーバーは、特定の状況下、あるいは一定の条件などの基準を満たした場合には、違反や罰金の対象にならないとされる範囲を指す概念で、諸外国でも法規制に取り入れられている。 企業活動において、行為規制を包括的に定義するケースにおいては、違法か適法かの判断材料やその基準が不明確であれば、企業はリスク回避を優先し、仮に合法とみなされる行為だったとしても、これを意図的に回避する行動を指向しがちとされる。 そこで、こうした懸念を踏まえ、適法行為もしくは合法とみなされる行為をパターン化したうえで事前に提示することで、企業側の心理的安全性確保につながることが期待されるわけだ。 そこで本WGではセーフハーバーの方向性として、Scope3排出量開示を例示している。 これにより、企業が統制外の第三者から取得したデータに誤りが存在した場合であっても、企業による適切な事後検討や投資家向け説明が行われることを前提に、合理的範囲内なら虚偽記載の責任を負わないとすべき、とされた。