W杯アジア最終予選で中国に大勝した日本代表。福西崇史が最も評価したのは「ボランチ+3バックの安定感」
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 第107回のテーマはワールドカップアジア最終予選・中国戦について。いよいよ始まったFIFAワールドカップ26 アジア最終予選。中国との初戦に日本が7-0の大勝。終始圧倒した日本代表の試合を福西崇史が振り返る。 * * * 9月5日(火)に行われたFIFAワールドカップ26 アジア最終予選、中国との初戦で日本が7-0の大勝を収めました。まずは最終予選の初戦に簡単な試合はない中で、力の差があったとはいえ、大量得点で勝てたことは賞賛に値します。 二期目の森保一監督がチームとして積み上げてきたものがしっかりと出た内容で、なおかつ個々のレベルアップも感じられるパフォーマンスが見られました。チームとして非常に安定した戦いができたことはよかったと思います。 前半の内容で決まったような試合だったと思います。中国が4-4-2で引いて守ってくるというのは、想定して準備をしてきたはずです。最終予選はこれまで何度も引いた相手をどう崩すかという戦いでした。 そこで日本は3-4-2-1で両ウイングバックにMF三笘薫とMF堂安律を置く、非常に攻撃的な布陣を採用しました。中央を固める中国に対して両サイドを起点に横に揺さぶり、三笘や堂安にパスが入ったときにボールを下げるだけではなく、上田綺世がクサビを受けたり、南野拓実が斜めに裏へ抜けたり、中へ入れることをやり続けたことがよかったと思います。 それで相手が絞ってきたときに逆サイドへ展開し、さらに相手を揺さぶることで、その後の布石として相手を走らせ続けました。 そんな相手が引いて守る中で、前半12分という早い時間帯にCKから先制点が奪えたことは、試合展開を非常に楽にしたと思います。最近はCKから点が取れないと言われていた日本でしたが、デザインされたプレーで得点できたこともまたよかったと思います。 中国はCKの際にマンツーマンで守ることがわかっていて、それを利用してスクリーンでマークを外し、遠藤航がどフリーでヘディングシュートを打てたことは狙い通りだったと思いますね。 2点目は久保建英が右サイドで起点になり、相手が2人で対応したことで堂安がフリーで受けました。そのときに上田や守田英正の動きもあって全体が右サイドへスライドし、中国の右サイドバックは絞らざるを得なくなり、大外で三笘がフリーになりました。そこへ堂安がピンポイントのクロスを入れてのゴール。一連の流れから三笘のヘディングまで非常に鮮やかな得点でした。 後半から中国は5-3-2にシステムを変え、より守備的な布陣にはなりましたが、それによって中国の中盤の枚数が減り、日本はより余裕を持ってボールを持つことができるようになります。前半は上田へのパスコースが切られていましたが、中盤が3人になったことでコースが空いてきました。 そして後半7分という早い時間帯に、南野が上田とのコンビネーションから3点目を決め、中国は戦意を失ったように見えました。6分後にも南野がドリブル突破から4点目を追加し、中国は帰化選手を一気に3人投入しましたが、状況は変わりませんでした。 3点目のように南野と上田の連携は非常によかったです。上田はよく前線で孤立しがちでしたが、南野が良い距離感でサポートにいることで孤立せず、上田のポストプレーが生きた場面を作れました。