耳・鼻・喉の「低侵襲手術」は高度な技術や論文が蓄積―鼻は日帰り手術可能な施設も増加
◇心とからだへの負担が小さな手術
近年、内視鏡技術の進化により、さまざまな分野で体への負担が小さい「低侵襲手術」が普及しています。中でも耳・鼻・喉の低侵襲手術の歴史は古く、低侵襲手術になくてはならない内視鏡を早期から導入し、幅広く活用してきたのが耳鼻咽喉科です。すでに高度な技術や論文報告が豊富に蓄積されています。 また、耳鼻咽喉科分野では、身体への負担が小さいだけでなく、聴く・(においを)嗅ぐ・食べる(飲み込む)といった機能をそこなわないことに留意して技術が進歩しており、とくに鼻の場合、日帰りで低侵襲手術ができる地域の専門施設も増えています。
◇低侵襲手術のメリット
■メリット1:傷が小さい 外見上分るような傷痕がない。そのため、術後の痛みも軽微です。 ■メリット2:回復が早い 傷が小さいため、術後の回復も早く、短期間で退院でき、スムーズに日常生活に復帰できます。 ■メリット3:機能を損なわない 今では聴く・嗅ぐ・飲み込むといった機能を損なわない手術が一般的。むしろ機能改善を目指す手術が中心になりつつあります。
◇鼻づまりの手術 日帰りや短期入院で対応可能な場合も
低侵襲手術の中でも、もっとも症例が多いのが「鼻」です。1985年にMesserklingerが鼻の穴を利用する内視鏡下副鼻腔手術(FESS)を報告して以来、多くの鼻の外科手術が内視鏡下に行う低侵襲手術に置き換えられてきました。 鼻は、呼吸をしたり、においを感じたりするだけでなく、空気中のゴミやウイルスなどが体の中に入るのを防いだり、エアコンや加湿器のように湿度や温度を調節するはたらきも担っている大切な器官です。そのため、鼻づまりを抱えていると、生活の質が著しく低下し、睡眠時無呼吸の原因にもなります。正常な鼻呼吸は健康長寿の条件のひとつといってもいいでしょう。 ところが、2019年に行われた鼻アレルギーの有病率調査によれば、日本人の約5割がアレルギー性鼻炎と答えています。 低侵襲手術は、鼻づまりをともなう、さまざまな鼻の疾患に適用されています。 一般に、内視鏡を用いた鼻の低侵襲手術の手術時間は1~2時間。鼻粘膜を温存して機能を損なうことなく鼻の通りをよくすることが期待できます。