耳・鼻・喉の「低侵襲手術」は高度な技術や論文が蓄積―鼻は日帰り手術可能な施設も増加
◇耳も数日で退院可能
耳の手術には顕微鏡手術と内視鏡手術(内視鏡下耳科手術:TEES)の2つに大きく分けられます。顕微鏡手術は耳の後ろを切開し、骨を削って行われますが、内視鏡を用いた低侵襲手術は耳の穴から内視鏡を入れるため、身体への負担が少なく、日帰り、あるいは、短期の入院で日常生活に戻れます。耳の低侵襲手術(TEES)は傷痕の残らない痛みが少ない手術で、術後から眼鏡をかけることができます。 耳の低侵襲手術(TEES)は、聞こえの改善が目的となり、さまざまな耳の疾患に適用されています。鼓膜に穴があいた慢性中耳炎や、鼓膜の奥に水がたまる滲出性中耳炎、骨を破壊しいろいろな合併症を引き起こす中耳真珠腫、音を伝える耳小骨が硬くなる耳硬化症など、これまで顕微鏡手術が行われていたほとんどの疾患が対象となります。
◇中咽頭がんはロボット支援手術も
近年、口腔がんや咽頭がんなどの頭頸部がんが世界的に増えています。がん全体の中では約5%に過ぎませんが、年間の罹患(りかん)者数は1万5000~2万人。とくに口腔がん・咽頭がんの場合、男性では50代後半から、女性では70歳から死亡率が増加します。 とくに咽頭は話す・食べる・飲み込むといった日常生活を営む上で大切な部分のため、低侵襲手術に対する期待がますます高まっています。たとえば、咽頭の中でも喉の奧に当たる「下咽頭がん」の場合、初期段階であれば、機能を温存したまま患部を切除することが可能なため、術後早期に食事が再開できます。 近年では、中咽頭がんに対して内視鏡が付いたロボットアームを遠隔操作して手術をする手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いて低侵襲手術を行う医療機関もあります。※1 この場合、口からロボットアームを挿入して手術を行うため、身体への負担が少ないうえ、より高度かつ安全性の高い手術が行えます。 頭頸部がんは、健康診断や人間ドックの検査項目に入っていません。また、初期段階では自覚症状が乏しいため、見落とされやすい傾向にあります。気になる人は、ためらわずに耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診してください。 ※1進行度等に応じてはロボット手術の保険適応となる場合があります。詳しくは専門医にお尋ねください。 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「健康寿命への挑戦」より引用 https://www.jibika.or.jp/owned/healthy-aging/minimally-invasive.php
メディカルノート