新体操の常識を覆し、「体重を減らす」から「増やす」指導へ──インターハイ常連校が取り組んできた、女子選手の体を守る「チームサポート」 #性のギモン
「生徒を人に任せるのが嫌だった」 葛藤を乗り越え信頼を築く
橋爪さんには当初、チームでサポートしていくことに葛藤があったという。 「生徒を人に任せることが嫌だという気持ちがありました。私が知らないところで知らない話をされるのが気になってしまうのです。(県スポーツ協会が実施する)マルチサポートシステムはいまだに利用者が多くないようですが、同じような理由で利用しない部活動の顧問はいると思います」 「2人を信頼して任せられるようになるまで1年かかった」と話す。 「上條さんは、持ち運びしやすいボトルに野菜を入れてシャカシャカ振るとサラダになって食べやすいとか、おにぎりの具を工夫すれば必要な栄養素が取れるなど、具体的な方法を提案してくれました。鈴木さんは、自主的に何度も体育館に足を運び、私に質問して、新体操を学んでくれました。そうした日々の積み重ねが信頼となっていきました」 上條さんは当初、「生徒のために」という思いが強くなり、栄養に関して「もっとこうしたほうがいい」と選手に強要しそうになった、と話す。 「そんなとき、橋爪先生から『アスリートファーストで』と声をかけられ、選手の気持ちや状態を考えながらサポートしていくようになりました」
鈴木さんは、橋爪さんと生徒たちの関係をこんなふうに話す。 「橋爪先生は、技術はもちろん、競技に向き合う姿勢や生活態度、体調管理も含めてとても厳しい。でも、生徒を絶対に見捨てません。そんな姿勢が伝わっているから、みんな必死についていくし、我々もサポートしたいと思えます」 今では、全国大会が終わったあと、3人で飲みに行くのが何よりの楽しみだという。 「伊那西には、強くなりたい生徒たちが入部しています。体脂肪率や骨密度の計測がなぜ必要か、生理がくることがなぜ大事か、きちんと説明すれば、納得して協力してくれました。ここまで寄り添ってくれる管理栄養士やトレーナーのためにもがんばらなければという思いを持って、生徒たちは全国大会の舞台に立つ。大きな力になっているはずです」(橋爪さん)