「親子ワーケーション」筆者も8泊9日で体験 背景には自治体のある狙いが
■テレワークに助成も こうした層を受け入れるべく取り組みを始める自治体も増えてきた。テレワークのための滞在に助成を出したり、空き家を整備し、「移住促進住宅」として格安で貸し出したり、子どもを地域の保育施設で受け入れる仕組みを整えたり。施策として整備されていなくても、自治体に問い合わせれば移住促進住宅の利用や保育園受け入れをOKしてくれるケースも多いという。 私が滞在した福井県の場合、県外から福井を訪れてテレワークする人に交通費最大1万5千円と滞在1日あたり1千円を補助する「お試しテレワーク助成」を2022年にスタートし、23年からは「ふく育県留学」として親子ワーケーションの受け入れを本格化した。現在は福井市と坂井市で保育園・小学校の短期受け入れを行っているほか、訪れる家族に対して滞在施設の紹介や保育園・小学校との連絡調整、滞在中の過ごし方の相談に応じている。私たちも最初の問い合わせから担当者と何度もやり取りし、実際に行くことを決めてからは保育園や滞在先のオーナーとのオンラインミーティングをセットしてもらうなど様々なサポートを受けた。制度を担当する福井県交流文化部定住交流課の渡辺淳基さんはこう説明する。 「2022年に福井に来てもらうきっかけづくりとして『お試しテレワーク』の助成を始めました。その後、福井ならではの生活環境や子育て・教育環境を家族で体験してもらうために保育園や小学校の受け入れを含めた親子ワーケーションの取り組みをスタートしました。まずは福井に足を運んでもらいたい。そして、できれば福井に通っていただいて、福井を移住先の候補として検討してほしいというのが私たちの願いです」
■「ゆくゆくは移住も」 各地で人口減少が進むなか、移住・定住の促進は多くの自治体が共通して目指す課題だ。自治体側の親子ワーケーション受け入れには、「ゆくゆくは移住も」という狙いがある。もちろん、親子ワーケーションでの滞在が直接移住につながるケースは多くないだろう。それでも一度足を運び、再訪するきっかけには十分なり得る。私たち家族が福井を訪れたのは長男が恐竜好きで福井が「恐竜王国」だったことが大きいが、比較的長期で滞在したのは受け入れのための仕組みが整備されていたからだ。そして、子どもは「また行きたい」と話し、私たちもいい時間を過ごすことができた。地域の魅力も存分に感じられたことから再訪も具体的に考えている。移住することは今のところなさそうだが、定期的に通う地域になるかもしれない。 前出の今村さんもこう話す。 「私たちがサポートする親子ワーケーションの事例では、再訪率6割というケースもありました。私自身、和歌山や知床、鳥取など親子ワーケーションをきっかけに何度も通う地域がいくつかあります。普通の旅行より地域と深くかかわる親子ワーケーションは関係人口の創出に大いに寄与するし、それが地域の維持にもつながっていくはずだと感じます」 親子ワーケーションは、働く世代にとっても、子どもたちにとっても、そして地域にとっても、ウィン-ウィン-ウィンの可能性を秘めている。(編集部・川口穣) ※AERA 2024年11月25日号
川口穣