「親子ワーケーション」筆者も8泊9日で体験 背景には自治体のある狙いが
旅行と仕事を組み合わせ、非日常の環境で働きながら休暇を取る「ワーケーション」は、2017年ごろから働き方改革の一環として注目され始めた。その後、新型コロナウイルスの流行でテレワークを導入する職場が増えると、フットワークの軽い単身者を中心にワーケーションを実践する人も珍しくなくなった。その波がいま、「親子」にも少しずつ広がってきている。 毎日新聞社などが設立した毎日みらい創造ラボで親子ワーケーションの事業化にあたる今村茜さんは、2018年から自身でも親子ワーケーションを実践し、これまでに20カ所以上を訪れてきたという。17年に経済部記者として企業のワーケーションの取り組みを取材したのがきっかけだった。 ■「求めていた働き方」 「最初は純粋に私自身がやってみたいと思ったんです。でも夫は激務で、やるなら自分が子どもを連れていくしかない。できる場所を探し、まずは和歌山県の実証実験に参加、その次は地域の学童に通うことができた北海道・知床の斜里町に行きました。実際にやってみると、子どもといろいろな地域に出かけて新しい体験をさせてあげられるうえに、自分の仕事にも責任をもって取り組める。共働きでも子育てと仕事を両立できると、ドハマりしたんです」 子どもを預けることで、子どもを介して地域の人と深くつながれることも魅力だったという。一方で、子どもの受け皿や滞在施設など課題も多かったことから、19年に毎日新聞の新規事業として親子ワーケーションの事業化に取り組みはじめ、21年にはSNS上に情報交換や交流のためのコミュニティー「親子ワーケーション部」を立ち上げた。「部員」は2200人を超え、今村さんが主宰する体験イベントも毎回盛況だ。 職種によってはテレワークが不可能な仕事も多く、誰にでもできる働き方ではない。それでも、親子ワーケーションは新しい働き方への感度が高い層に求められ、広まりつつあるという。 「体験イベントなどに参加した人からは、『これが私の求めていた働き方だと思う』という声が聞かれます。環境も少しずつ整っていて、地域の保育園やゲストハウスが子どもの受け入れ先になってくれる例も増えてきましたし、民間企業のサービスも生まれてきました。やりたいと思ったらできる環境ができつつあります」(今村さん)