長崎にて雲仙湯道文化祭が開催! 家元・小山薫堂率いる「湯道」の未来に光が射した
湯のプロフェッショナルが“これからの温泉のカタチ”を探る、湯道未来会議
授賞式に続いて、湯道未来会議がスタート。湯に一家言持つ識者たちが、「湯を活かした街づくり」をテーマに語り合った。ファシリテーターの小山に加え、雲仙観光局代表理事の山下浩一さん、草津温泉女将の会「湯の華会」会長の黒岩智絵子さん、温泉ビューティ研究家の石井宏子さん、ONDOホールディングス代表取締役社長・山﨑寿樹さんの5名が参加した。 まずは魅力ある街づくりに積極的な草津温泉が話題にのぼり、黒岩さんが年間370万人を呼び込む仕掛けや舞台裏を語る。「草津の人口約6000人のうち、9割がサービス業従事者。みな目指すものが同じなので、いろんな挑戦がしやすいんです」と黒岩さん。 「温泉地は“周囲の地域を巻き込んだショールーム”になれる場所」と言うのは石井さん。温泉だけでなく、人々に地域全体を楽しんでもらうのが今後の旅のトレンドになると予想する。新潟や群馬などの連携事業、雪国リトリートを例に、地域全体と繋がる重要性を説いた。 地域のよさを詰め込んだ15の入浴施設を運営する山﨑さんも、自身の経験から湯による地域おこしは可能だと語る。最近注目するブームとして、昭和レトロと現代湯治というキーワードが挙げられた。 さらに小山も「インスタ映えは即効性があるけれど、結局、人だと僕は思います」と述べる。「また会いに来たくなるような人が湯をつくっていれば、その存在が“街の観光大使”になるんですよね」 他にも黒川(熊本)、別府(大分)、東川町(北海道)などの施策やアイデアが披露され、愛される温泉地に必要な条件や課題が見えてくる。観光局の山下さんもいたく刺激を受けた様子。このディスカッションが、雲仙市の魅力をさらに高める契機になるかもしれない。
室町時代の風流な愉しみを再現した「淋汗茶湯」
最終日には、湯道ならではの企画「淋汗茶湯」も催された。本来は風呂で汗を流した後、抹茶の飲み比べを楽しむ茶会のことで、室町時代から全国各地で行われたという。今回は、雲仙の工芸×茶道×湯道のコラボによる再現だ。 当日は2回に分けて、各10名の有志が参加。ひなびた味の共同浴場、だんきゅう風呂でひと風呂浴びて、開催場所の雲仙焼窯元へ。そこで客をもてなす亭主は、裏千家今日庵業躰の奈良宗久さん。端正な所作と時折挟むユーモアが快く、茶会は不慣れという参加者も緊張がほぐれ、自然と笑顔になっていた。 地元の和菓子屋「永昇堂」の主菓子がふるまわれるなか、茶会は和やかに進行。家元や参加者同士の話も弾み、くだけた空気が茶室を包む。「かつては揚屋(あがりや)などでも行われた淋汗茶湯。お茶だけでなく、お酒や食事も含めた気軽な楽しみだったんです」と奈良さんが微笑み、くつろいだ過ごし方を肯定する。 長崎らしいクルス(十字架)をあしらった器を始め、個性豊かな茶道具を愛でるのもまた眼福。雲仙焼窯元が、今回のために特別につくった水指などの湯道具も見られた。湯を介し、こうした感性や伝統に触れるのも“文化の結び目”たる湯道の醍醐味なのだ。
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