妊娠後1000日の「砂糖摂取」が糖尿病や高血圧のリスクを増加させる…子どもの発病リスクへの影響が米研究で明らかに
妊娠し子どもの命がスタートしてから1000日の間、母親が砂糖の摂取量を減らすと、子どものその後の人生で健康問題を引き起こすリスクが下がることが、新たな研究で示唆された。UK版ウィメンズヘルスがレポート。 【写真】実は体によくない!?「栄養士が避ける40の意外な食品」 この研究では、「受胎(妊娠)から出産を経て、生まれた子が2歳になるまでの期間」は、赤ちゃんが母体から栄養を吸収し、離乳食や固形物に移行してゆく時期で、健康的な栄養摂取において非常に重要な時期であることが明らかになった。 この期間に母親(と子ども)が砂糖の摂取を制限することで、中年期の2型糖尿病のリスクを35%、高血圧のリスクを20%低下させることにつながり、また、砂糖の摂取量が少ない食生活を送っている人は、砂糖の摂取量が多い人に比べて糖尿病の発症が4年遅く、高血圧の発症が2年遅かったという。 ※本記事は、イギリス版ウィメンズヘルスからの翻訳をもとに、ウィメンズヘルス日本版が編集して掲載しています。 南カリフォルニア大学の研究チームは、英国における「自然実験」を利用し、第二次世界大戦後10年間にわたって行われていた砂糖と菓子の配給制度が、1953年に終了した後に発表されたデータを調べた。配給制度時の砂糖摂取の制限は現代のガイドラインに匹敵するレベルに設定されていたが、配給制限が終了するや否や、砂糖の消費量は1日あたり約41g(角砂糖10個)から80g(角砂糖20個)へと約2倍に増加していた。 科学者たちはバイオバンクのデータを分析し、胎児期から乳幼児期に配給制度を経験した3万8000人と、経験していない(配給制度終了後に生まれた)2万2000人の中年期の健康状態を比較。その結果、糖尿病と高血圧の発症率は配給制度中に2歳を迎えた人の方が大幅に低く、配給制度中に胎内にいた人も発症率が3分の1程度低かった。 また興味深いことに、配給制度の終了後もたんぱく質と脂肪の摂取量はほとんど変わらず、バターの摂取量も変わらなかった。 妊娠中の母親の食生活も当然ながら重要で、妊娠期に母親が砂糖の摂取を制限した場合、そのメリットの3分の1は胎内にいる赤ちゃんにも影響する。しかし、最も大きな健康改善が見られたのは、胎児が胎内にいる間と、離乳食を摂取し始めたときの両方で砂糖の摂取を制限した場合だった。 ロサンゼルスにある南カリフォルニア大学の研究者の一人、タデジャ・グラクナー氏はBBCに対して次のように語っている。「胎児期や乳幼児期に糖分制限を行うと、数十年後の糖尿病や高血圧のリスクを著しく低下させ、発症を遅らせることにもつながります」 彼女はさらに、妊娠中に母親が砂糖を多く摂取した場合、「胎児プログラミング(妊娠中の母親の栄養状態が子どもの疾患発病リスクに影響するとされる)」などの要因を通じて、「子どもの肥満や代謝異常のリスクが高くなる」と付け加えた。 加えて、乳幼児期に甘いものを食べると、生涯にわたって砂糖への嗜好が定着する可能性がある。彼女は「ほとんどの人は甘いものが好きですが、研究では、幼少期に大量の砂糖を摂取すると、その嗜好性が強まる可能性があることがわかっています」と言う。しかし、砂糖は「どこにでもあり、赤ちゃんや幼児の食べ物にも含まれている」ため、避けるのは「決して簡単なことではない」ことを認めている。 サウサンプトン大学のキース・ゴッドフリー教授は、『ガーディアン』の取材で次のように語っている。「これらの研究結果は、ゆっくりと消化吸収され、血糖値の上昇が緩やかになる低GI食品を妊娠中に食べた母親の子どもが、肥満になる確率が低いことを示唆した私たちの研究結果と一致しています」 食品学と栄養学を専門とする、オックスフォード・ブルックス大学のジェルーサ・ブリナルデロ講師は、「この研究結果は、妊娠前や妊娠中の女性、そして乳幼児期の子どもを持つ親への注意喚起になるでしょう」と述べている。 彼女はさらに、「食品業界は将来の世代のウェルビーングを優先し、エビデンスに照らして乳幼児をターゲットにした製品の改良を検討すべきです」とも語っている。