経済損失への補償なし 企業からは支援求める声 南海トラフ地震臨時情報、政府調査
南海トラフ地震臨時情報の発表を巡っては、交通機関の運休、観光地の予約キャンセルなど各方面で企業活動に影響が出た。ただ、損失への補償や支援といった制度はなく、政府が26日に公表した臨時情報の対応調査では、事業者から対策を求める意見が上がった。BCP(事業継続計画)の策定について指針を求める声もあり、企業側が備えに不安を抱えていることもうかがわせた。 【一覧でみる】南海トラフ地震臨時情報への対応調査の主な結果 調査では、鉄道会社の運休、携帯電話基地局の高所作業中断など、発表を受けた各業界の対応が報告された。旅行業界の影響は大きく、旅行の中止、無料キャンセルを余儀なくされた。 旅行関連支出の落ち込みについて、野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英氏は、発表の対象地域1都2府26県で計1964億円になると試算。年間名目GDPの0・04%程度で、規模は大きくはないが、「地域の記憶には残っている。今後同様の地震、臨時情報が重なり不安が高まれば、影響はさらに大きくなる恐れもある」と述べた。 観光庁の秡川(はらいかわ)直也長官は8月の記者会見で、キャンセルなどの損失に対し「直ちに補償することは現時点では難しい」とした。調査では政府への要望として「影響が長期に及ぶのであれば、キャンセル料の徴収可否など、雇用や施設を維持できる施策・基準が必要」として、対策を求める声が上がった。 調査では、活動を継続するための備えに多くの事業者が取り組む一方、「対策の進め方がわからない」「業種別に特化したBCPのガイドラインがほしい」との声もあり、備えが十分でない実態も浮かび上がった。