「牧のバットが4mm細い理由」牧秀悟と職人たちの絆がスゴい...「驚嘆させられたコンマ2mmの違い」「内緒で削った10gの信頼関係」
太さは関係ない
現在のバットも長さは85cmで、形状もいろいろ試していく中で、3年生のころに落ち着いた型をプロ入り後も変えずに使ってきた。 「牧君のバットの特徴は一般的なものより細いこと。芯の位置の直径で4mmほど細いです。なぜ、細いか。彼のバッティングはどちらかというと、バットをしならせて打つというよりはバチンと当てる打ち方。だから打感の硬いバットが合うんですよ。 木には比重があって、比重が高いものは重量も重い。ですから打感の硬いバットを作るには比重の高い材料を細くして重さを出すしかないんです。意識して見ていただけたら、牧のバットは他の選手より細いと気づけると思いますよ」 バットが細くなるとそれだけミートが難しくなるかといえば、そうではないと森崎氏は首を横に振る。 「みなさん、そう思われるんですが、丸いものと丸いものが当たるわけです。点と点を合わせにいくわけですから、太さは関係ないです。むしろ太いバットだと打ち損じが内野フライやファールフライになってしまう。牧君にもそのあたりの話をしたらしっかり理解してくれた。中大のときからずっと使っていますし、太い柔らかいバットの方がすごく違和感を覚えると話していますよ」 しかし、そんな手に馴染んだバットに今季途中、初めて変更を加えたという。
牧の打席をずっと見てきた
「毎オフ、翌年のバットの相談をするんやけど、牧君はいつも『変える気はありません』だった。昨オフもそうでした。しかし、7月に入って引っかける打球の凡打がすごく増えた。どういうことかというと、ヘッドが早く返ってしまうんです。僕は技術のことは言えませんが、道具で解消する方法があるんです」 打率も降下してきたお盆過ぎ、森崎氏が施したのは引き手である左手部分を太くすることだった。 「牧君とリモートで打ち合わせをさせてもらって0.3mm太くしました。シーズン途中で大きく変えると違和感が大きいので、それは絶対にやってはいけない。でも、わずか0.3mmと思われるかもしれませんが、前に話したように0.2mmの違いがわかる選手ですから、違和感は決して小さくなかったと思いますよ。『とにかく慣れろ』と言いましたが、使い出してから違和感がきついか聞くと『行けそうです』とのことだった」 復調した牧は9月には月間打率.382と快音を重ね、チームも主砲に導かれて一時は危ぶまれていたクライマックシリーズ進出圏内の3位に浮上。下剋上達成への号砲となった。 「プロの世界というのは、0.00何秒の感覚を持っている選手たちが集まっています。バットの芯の位置だって3mm単位くらいで合わせていきますからね。ほんまにちょっとしたことで変わるんですよ」(森崎氏) だからこそ、森崎氏は牧の打席をチェックすることを欠かさない。 「中大のときもほぼすべての打席を見ていますよ。東都は中継が見られますし、彼の打席だけ見ればいいので、そんなに苦ではないですよ。いい打球を打っているとき、凡打しているときをチェックして、芯の位置をイメージしながらバットの型を決めて、できたものを試してもらってというのを繰り返して今の型になっている」 ずっと見てきたからこそ、そのときの状態もよくわかる。プロ2年目にはやってはいけないことをしたという。
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