「牧のバットが4mm細い理由」牧秀悟と職人たちの絆がスゴい...「驚嘆させられたコンマ2mmの違い」「内緒で削った10gの信頼関係」
プロ選手と対峙する職人の誇り
「彼は本当にむちゃくちゃ練習する選手で、『体の厚みが正面から見ても、横から見ても一緒やな。さいころだな』と冗談を言ったこともあるんやけど、やりすぎなくらい頑張ってしまう。そのため疲れがたまる7月ころに打率が落ちる傾向がある。1年目もそうでしたし、2年目も明らかにバットが振れなくなっていた。 それで牧の注文がきたときに、わざと10g軽くして送ったんです。彼のバットの重さは870gなので、860gにして。でも彼は疲れているからバットが軽くなっていることに気づかなかった。あかんことをしましたが、そのバットを使うようになってからまた打ち出したんです」 その年のオフ、翌年に向けた打ち合わせの際、森崎氏は牧に頭を下げた。 「牧、すまん。俺、謝らなあかんねん。あのときバットを10g軽く作って渡していたんや」 「エッー。全然わからなかったです。なんか、あのあたりから、えらいバットが振れ出したんですよ。えらい調子が上がってきたなって勘違いしていました」 選手と職人として絶対的な信頼関係を築けているからこそできた勇断だったのだろう。森崎氏は職人の誇りを、こう言葉にする。 「僕らは選手に活躍してもらってなんぼの立場です。シーズン当初から終わりまで同じコンディションで野球をできる選手なんていないから、相談しながら、プレーを見ながら微調整を加えたりする。木製バットは100本作って100本まったく同じものというのは無理なんです。 梅雨どきは選手の手元に着いてから重くなることはあっても軽くなることは絶対にない。だから5gくらい軽くしたりする。使っている間にちょうどよくなるようにとか、そういうことも考えながら1本、1本、削っています。 僕らもプロですから、引き受けた責任がある。プロとして、プロに使ってもらうにはド根性、出していかんと彼らに見切られてしまう。そこは僕らもプロのプライドを持ってやる。それは常に胸に置いてやっています」 次回記事「「本気度が伝われば絶対に応えてくれる」...牧秀悟と職人たちのチームがすでに進めている「進化計画」と「来季狙うタイトル」」では、牧を中大時代からサポートしているグラブ職人の上武(かみたけ)直人氏が、プロ入り後の意外なグラブ変更、安定した活躍を実現できる秘訣を詳述。さらに「チーム牧」が進める25年シーズン進化計画にも迫る。
週刊現代、鷲崎文彦
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