【ソフトバンク】現実直視した上沢直之 古巣から促された「メジャー再挑戦」を断念した理由
受け入れがたい現実を認め、1年で夢を封印した。ソフトバンクに新加入した上沢直之投手(30)が26日に福岡市内のホテルで入団会見に臨んだ。4年7億円超(推定)の契約で、背番号は「10」。賛否が渦巻くホークス入りの経緯を自らの言葉で説明した。 【写真】時折、険しい表情を見せた上沢 昨オフ、日本ハムからポスティングシステムの利用を容認されてメジャーに挑戦。マイナー契約でも夢を追いかけるという固い決意を古巣が後押しした形だった。レイズを経て、開幕前にレッドソックスに移籍。念願のメジャー昇格を勝ち取るも救援でわずか2試合の登板にとどまった。マイナーでは20試合で防御率7・63。抱えていた右ヒジの痛みが悲鳴を上げた9月に戦線を離れて帰国し、不完全燃焼でシーズンを終えた。 「本当に申し訳ない」。快く送り出してくれた古巣への複雑な胸中を吐露した。1年での日本球界復帰。世間の批判的な声は想像以上だったはずだ。古巣以外のチームに移籍する以前に、夢を語って飛び出した覚悟を問われていた。条件面でソフトバンクよりも劣る獲得オファーを出した日本ハム。球界関係者によれば「〝このまま日本に帰ってきていいのか〟というサインは、上沢に対する古巣の親心」だったという。 なぜ、1年で夢を諦めたのか。「アメリカの野球に適応しようと試行錯誤しながら、毎日苦悩する日々が続いた。24時間ほとんど野球のことばかり考える生活だった」。それでも「うまくいくことがなかった」。NPB通算70勝を誇る元日本ハムのエースが〝完全敗北〟を認めた瞬間だった。 日米の力量差、データ野球の中で自分の強みが消える現実を突きつけられ〝次の1年〟では埋められない差を思い知った。ボールの違いに苦労し、不慣れな中継ぎでヒジを痛め、新シーズンはリハビリというハンディからスタートする。上沢はこの日「再構築」「挑戦」という言葉を繰り返した。家庭がある身で、新たな挑戦が限られる30歳という節目の年齢。「簡単な決断ではなかった」。腰を据えて再構築できる環境とハイレベルな競争を求めた結果だった。 プレーヤーとしての現実を直視し、古巣への申し訳なさも抱き、批判覚悟で決めたホークス入り。「自分で決断した道なので、よかったと思えるように結果で見せたい」。有言実行を誓い、精いっぱい腕をぶした。
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