はるな檸檬が描くファッション業界のリアル:話題の漫画『ファッション!!』をひもとく
何でもやってみる精神
ー漫画ではファッションショーが行われる過程がリアルに描かれていましたが、実際にどういった取材をされているのですか。 ファッション業界で働いている知り合いに、何でもやるからって言いまわってお手伝いをさせてもらいました。取材をしているというより、ほとんどスタッフの一人のように振る舞っていたので、もしかしたら何人かの方は私のことをインターン生と思っていたかもしれないです。ファッションショーの受付をしながら、裏でちょこっと写真を撮らせてもらうなどして、取材を進めてきました。 このスタンスの原点は、私がアシスタントをしていた東村アキコ先生にあります。先生の元では何でもやる精神があって、それが染み付いていますね。 実際、当時は漫画のアシスタントだけでなく、イベントのスタッフもしましたし、なぜか踊ったこともありました。とにかく多岐にわたることをやらざるを得ないという状況だったのですが、それが思いのほか楽しかったかな。
舞台の裏側と人間の内面性
ー『ファッション!!』は現実のリアリティさと漫画としてのエンタメ性のバランスの取り方が絶妙だと思います。 これは今も模索していて、本当に難しいと思っています。 最初の3、4巻くらいまでは、自分でも何をしていいかわからない状態でした。エンタメをやりたいんだけど、リアリティも見せたいという。今も葛藤はありますが、だいぶ慣れてきたかなとは思います ー取材の蓄積があるからこそ、判断が難しいところですね。 私が漫画で描きたいことは2つあります。 1つはファッション業界の裏話です。私が取材や話を聞いて、こんなにもファッション業界は面白さで溢れているのかという驚きを、もっと知ってもらいたいという思いがあります。すごく華やかそうに見えるけど、服以外興味ない人も多くて、あ、意外とコンビニおにぎりで満足するんだ、とか(笑)。 そして、もう1つは人間なんです。こちらの方が本当にやりたいことです。業界で働く人たちの考え方だったり振る舞いを通じて、実はどの業界にもあるような普遍的な人間の性とか業のようなものを描いていきたい。