【星風まどかさん】「幸せいっぱい」の卒業の日。宝塚退団の“覚悟”と再出発への思い
元宝塚歌劇団花組トップ娘役として数多くのファンを魅了し、退団後の活動にも注目の集まる星風まどかさんが女性誌初登場! ミュージカル『ニュージーズ』への出演も決定し、シンデレラのごとくミュージカル界への第一歩を踏み出した星風さんに、退団のときの思いやいまの心境をたっぷりとお話しいただきました! 星風まどかさんの写真をもっと見る 【星風まどか】 1996年11月11日生まれ、東京都出身。2014年宝塚歌劇団100期生として入団、2017年11月宙組トップ娘役就任。2021年に専科異動ののち同年7月花組トップ娘役に。主な代表作は『アナスタシア』『うたかたの恋』など。2024年5月『アルカンシェル ~パリに架かる虹~』で宝塚歌劇団を退団し、2024年10~11月、『ニュージーズ』、2025年1~2月、『ラブ・ネバー・ダイ』に出演予定。
■等身大の自分と照らし合わせながら表現したい ――まずは宝塚退団後初出演となるミュージカル『ニュージーズ』のキャサリン役についてお話をお聞かせください。 お稽古もまだですし、どんなふうになるのか、本当に緊張しています。でもお稽古が始まれば、向き合わなければいけない課題に真摯に向き合う、その時間が楽しみでもあります。キャサリンが歌わない曲も口ずさんでしまうくらい、素敵な楽曲が揃っているんですよね。そのぶん課題も多いのですが(笑)。 ――星風さんは何でもできてしまうトップ娘役というイメージでした! そんなことないです。昔は大人っぽい女性の役をいただくと、自分にはない引き出しが必要だったので、必死に背伸びしながらやっていた時代もありました。そういう経験を経て、今は自分の年齢も上がってきましたし、大人っぽいお役もより魅力的に、真実味を持って演じられるようになりたいと思っています。今回のキャサリンも今の自分と向き合いつつ、等身大の自分といい意味で照らし合わせながら、やっていきたいです。 ――星風さんといえば、“ヒロイン”が似合う娘役さんの印象でした。そういった役以外の、「強くてかっこいい女性」みたいなタイプにご興味はありますか? 幅を狭めず、決めず、というのは自分の中にずっとあって、強くてかっこいい、パワーのあるお役もできたらいいなぁと思います。それには、やはり“引き出し”が重要だと思うんです。どんなお役を演じるのでも“自分の中にあるものしか使えない”と感じているので、たくさん勉強して、吸収して、自分の中の引き出しをどんどん増やしていきたいですね。 あと、私は歌もすごく好きだし、踊りも好きなのですが、それらすべてには“お芝居心”というものがあり、心を表現していると思うんです。どんな歌手の方も心を込めて歌っていらっしゃるからこそ、その歌詞や曲が聴く側に届くと思うので、そういう意味でも、演じる、表現するということを、舞台というフィールドのみならず挑戦したいと思っています。 ■大切にしたいのは「にじみ出るような品格」 ――お稽古はこれからだと思いますが、『ニュージーズ』のキャサリンという役については、どんなふうに解釈されていますか? 深くはまだ掘り下げられていないのですが、キャサリンには素直さ、まっすぐさ、芯の強さがあり、少年たちとどんどん立ち向かっていくキャラクターですが、それに加えて、失われない品格、香り立つような品のよさがあります。 当時女性が新聞記者という職業でバリバリ働くのは難しい状況だったはずですが、彼女がその仕事を選んだ理由や気持ちなどをしっかり汲み取って、バックボーンを含めて役作りをしていきたいと思っています。 ――星風さんが考える“品のよさ”というのは、どんな部分に表れると思われますか? 私が客観的に見ていて「品のよさを感じる」と思う方は、内面からにじみ出るものを持っていらっしゃる気がします。最低限の所作や言葉づかいは常識として置いておくとして、内面から香り立つものを見つけて、育てていきたいですね。あと、思いやりのある方も素敵。そういうところも“品のよさ”につながるのではないでしょうか。あらゆるところにアンテナを張って生活していきたいです。 ■“幸せな気持ち”に満ちあふれていた退団公演 ――宝塚を退団されたのは今年の5月でした。退団を決意されたきっかけやターニングポイントとなった出来事などを教えていただけますか? 私は研4(入団して4年目)で娘役トップにならせていただきましたが、そのとき「もう私は辞めなくてはいけないんだ」という、すでに遠くにゴールを見たような感覚で、その立場になった以上、「卒業」はいつか必ず来るものだと覚悟はしていました。そこからはずっと、いつ卒業しても悔いのないように生きていたいと思って過ごしてきました。 ■「一人じゃない!」という気持ちで再スタート ――ちなみに、退団日の翌日、朝起きたときはどんな気持ちでしたか? 「あ、今日は休みか」って(笑)。最初はとにかく「ああ、今日は公演がないのか……」と、それだけ思いました。退団公演は一本物のミュージカルだったので、常に自分の体力や喉の状態に気を配りながら過ごしてきて、休演日をどう過ごすかも大切だったので、その延長でそんな感覚でしたね。 ――燃え尽き症候群のような感覚はなかったのでしょうか? なかった気がします。最後の公演期間中もずっと幸せで、卒業を決意して、発表してから、ファンの方々からもたくさんのお気持ちをいただいて過ごしていたので、燃え尽きるというより、「ありがとうございました」という感謝の気持ちしかありませんでした。 新たにファンクラブも作らせていただきましたし、SNSもスタートしました。そういったツールで今まで応援してきてくださった方々、新しく出会う方々とつながることもできます。応援してくださる方と“一緒に新しい人生を歩む”という感覚で、すごく心強いですし、「一人じゃない!」という気持ちでいられるんです。そういった意味では寂しさよりも幸せ、ともにまた新しい景色を見られる!という期待が大きいです。 柚香さん(元花組トップスター・柚香光さん)からご自身が卒業されるタイミングを伺ったのは『二人だけの戦場』という作品のお稽古中。一緒に卒業したいという気持ちが強かったので、お話くださった瞬間に迷うことなく、「私もご一緒させていただきたい」と伝えました。 ――退団公演の千穐楽の日の様子はどうでしたか? 当時の星風さんのお気持ちを聞かせてください。 朝から、袴を脱いでお布団に入るまで、本当に幸せで♡ いろいろな方々の温かい想いをこんなにもたくさん受け取ることはないと思いましたし、感謝の気持ちで満たされて、本当に心が温かくなって。こんな経験は人生で初めてでした。 たくさんの優しさと愛に包まれて、とにかく「幸せ!」という一言に尽きます(笑)。これまで先輩方が「幸せ」と言って卒業されていくのを見てきましたが、本当にそうなんだなって思いました。 ▶【星風まどかさん】「柚香さんの言葉に涙があふれて…」“れいまど”コンビの今を語る へ続く ワンピース¥42900/GRACE CONTINENTAL(GRACE CONTINENTAL代官山本店 03-5456-0209)、イヤリング¥2530、リング¥1650/ともにyuu(KARHTU 03-3486-0578)、その他スタイリスト私物 撮影/SAKAI DE JUN ヘア&メイク/根津しずえ スタイリスト/TAKURO 取材・文/前田美保
ブロードウェイミュージカル『ニュージーズ』 作曲:アラン・メンケン 作詞:ジャック・フェルドマン 脚本:ハーヴェイ・ファイアスタイン 演出・日本語訳・訳詞:小池修一郎(宝塚歌劇団) 出演:岩﨑大昇、星風まどか、加藤清史郎、横山賀三、霧矢大夢、石川禅ほか 2024年10月9日(水)~29日(火) 東京・日生劇場 2024年11月3日(日・祝)・4日(月・休) 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール 2024年11月9日(土)~11日(月) 福岡サンパレス ホテル&ホール