「妻と浮気相手の間に生まれた子」を見捨てられなかった夫の悲哀。養育費を支払う“条件”は離婚翌日に破られ…
元彼が愛情を持っていれば、今の状況になっていないはず?
元彼は自分のDNAを提出しているので、妻から鑑定の結果、自分が本当の父親だと聞かされているでしょう。もし、息子さんに愛情を持っていれば、離婚するのを待たずに、もっと早く迎えに来るはずです。なのに、今の今まで何も動きませんでした。筆者は「元彼は息子さんのことを何とも思っていませんよ」と指摘しました。 いかんせん、元彼は何度も警察のお世話になったヤバい奴。キレると何を仕出かすか分かりません。息子さんに手を上げる可能性もあるでしょう。母親である妻が元彼を制止できれば良いですが、もともと無口で気弱なタイプなので期待できません。度重なる虐待で命の危険にさらされる恐れもありますが、それだけではありません。 2022年、親が子どもを家に残してUSJを満喫。11時間後に帰宅すると子どもが熱中症で死亡していたという痛ましい事件が起きたばかりです。こども家庭庁によると2022年、児童相談所に寄せられた児童虐待の相談のうち、16.2%はネグレクト(育児放棄)でした。元彼と妻が息子さんをほったらかしにして出かけたりするかもしれません。優斗さんは「あいつが父親になったら、息子の命が守られる保証はありませんから」と声を荒げます。
毎月4万円の養育費を支払うことを約束
次に養育費の問題があります。どんなに妻が開き直っても、彼女のやったことは法律上、不貞行為です。優斗さんに対する裏切りであることに変わりはありません。そして精神的苦痛の対価として本来、妻は優斗さんに慰謝料を払わなければなりません(民法709条)。ただ、専業主婦の妻に慰謝料を支払う収入、貯金はありません。そこで筆者は「養育費と慰謝料を相殺する手もありますよ」と提案。 優斗さんは嫡出否認の申立をせず、離婚後も息子さんの父親のままなので、妻に対して養育費を払わなければなりません(民法766条)。提案したのは、優斗さんは養育費を払わず、妻は慰謝料を払わず、お金のやり取りを発生させないということです。 妻が離婚後、元彼と復縁した場合、元彼はお金に汚いタイプなので、子どもの食事より自分の遊びを優先することも考えられます。最悪の場合、食事を与えられず、命を奪われる可能性もゼロではありません。こども家庭庁によると2022年、児童相談所に寄せられた児童虐待の相談件数は219,170件。わずか1年で5.5%も増加しており、深刻な事態になっています。 そこで優斗さんは「やっぱり、息子のことが心配です。彼の父親であり続けることを決めたので、父親の努めを果たしていきたいと思います」と言い、息子さんを元彼に会わせないことを条件に、毎月4万円の養育費を支払うことを約束したのです。 ところで嫡出否認の訴えですが、申立人は父親(優斗さん)に限られません。妻が申し立てることも可能です。優斗さんが何もしなくても、妻側が動けば、例の鑑定書が動かぬ証拠となります。優斗さんと息子さんの血がつながっていないことが明らかになれば、父親失格の烙印を押されるのです。筆者は「優斗さんがいくら息子さんの父親であり続けたいと思っても、それは叶わなくなりますよ」と念押ししましたが、優斗さんは「そのときはそのときです」と唇を噛みました。