丸紅から出向の社長は、家族で長野に移住し、覚悟を示す…。ヨーグレット・ハイレモンの製菓会社が「明治から独立」で起きた変化
だが、丸紅の子会社として独立したからには、自分たちの手で全国のスーパーやコンビニエンスストアに届けなければならない。それは青天の霹靂とも言える変化だった。 ただ幸いだったのは、認知度の高いヨーグレットとハイレモンについて、多くの小売会社が販売を継続してくれたことだ。「明治様の下で40年以上、ブランドが育てられていたおかげです」と、丸紅から出向し、新たに社長に就任した山下奉丈さんは感謝を述べる。 しかし、グミのような新商品に関しては、営業して棚を取っていかなければならない。そこで同社は、新規採用を含め営業人員を強化。スーパー、コンビニ、ドラッグストアを中心に、全国に広くターゲットを設定して営業を開始したという。
その甲斐あって現在、採用店舗は着実に増えている。とはいえタブレットと比べると、取扱店舗数はまだ5~10分の1程度だ。しかし、グミ市場全体が拡大傾向にある今、それに伴って棚面積も拡大傾向にあるため、新規参入のチャンスは大きくなっているそうだ。 たしかに、筆者の近所のコンビニを覗いても、グミの種類は20~30は確実にある。しかしそれは、ライバルが多い状態とも言えるのではないか。 アトリオン製菓の生産企画部長 高宮隆一さんは、「熾烈な競争の中で生き残れるのは、お客様から真に支持され、何度も食べたくなる商品だと思っています。そうなれるよう、こだわって商品づくりをしている自信はあります」と強い口調で語る。
■現場は「好機」と受け止め、一体なぜ? 想像するだけでも大変な状況だが、社内には、好機と捉えている人も多いそうだ。 これまで、秘めたるアイデアや企画を持っていて、「いつか自分たちで製品や企業のブランディングをやっていきたい」と考えていた人たちだ。 これまでは、明治グループの1社として、方針や計画、目標値が定められ、それを達成する努力をすることが業務の主題だった。もちろん、そういった業務にも誇りを持って取り組んでいたが、「ものづくり」「お菓子づくり」を志して入社した社員、特に技術開発メンバーにとっては、今回のM&Aは、「やりたかったことを、自分たちの手でできるようになる」チャンスとなったのだ。