1回戦 高松商、快勝に大歓声 /香川
<センバツ2019> 第91回選抜高校野球大会が23日、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕した。3年ぶり27回目出場の高松商は、22年ぶり3回目出場の春日部共栄(埼玉)と対戦。序盤から小刻みに得点を重ねて流れをつかみ、投げてはエースの香川卓摩投手(3年)が13三振を奪う快投で完封。投打がかみ合ったチームは8-0で初戦を突破し、スタンドから大歓声が上がった。高松商は大会第6日の第2試合(28日午前11時半開始予定)で市和歌山(和歌山)と対戦する。【潟見雄大、日向米華】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 春日部共栄 000000000=0 00102410×=8 高松商 高松商のアルプススタンドには40台の応援バスなどで駆けつけた生徒や保護者ら約3500人が詰めかけ、試合開始直後から大声援で選手を後押しした。 待望の先制は三回。新居龍聖捕手(3年)、飛倉爽汰主将(同)の連打で無死一、三塁とし、大塚慶汰選手(同)が打席に。「自分に求められているのはゴロを転がして走者を還すこと」。狙い球の直球を振り抜くと、打球は遊撃手の横をしぶとく抜け、新居捕手が生還した。高松商の生徒らは笑顔で抱き合い、得点を喜んだ。スタンドで見守った大塚選手の父庸一郎さん(52)は「落ち着いてプレーできていると思う。守備が持ち味なので遊撃の守りでも貢献してほしい」と話した。 香川投手は開始から直球の切れや変化球の制球がさえ、四回までに8奪三振。父竜志さん(40)は「落ち着いてチームの勝利につながる投球をしてほしい」と期待した。五回は暴投などで2死一、三塁のピンチを招くも、得意の直球で九つ目の三振。その後は「相手は直球に強いので変化球をうまく使った」と相手打線に的を絞らせず、六回以降は二塁を踏ませなかった。 守りからリズムを作った高松商は五回、香川投手の適時打で2点を加点。六回には新居捕手のこの日3本目の安打などで好機を作り、大塚選手の適時打などで一挙4点を加えて突き放した。新居捕手の母由香利さん(42)は「出来すぎ。試合が始まるまでは見ているこっちが不安でしたが、結果が出てよかったです」と笑顔を見せた。 8点差で迎えた九回。先頭打者に中前打で出塁を許すも、二塁手の谷口聖弥選手(2年)の好守などで最後まで本塁を踏ませなかった。試合後に校歌を歌い、スタンドに駆け寄った選手たちに、応援団からは「次も勝つぞ」などと声援が飛んだ。 スタンドで応援した野球部員の淵崎陽介さん(3年)は「自分たちのやってきた『コツコツネバネバ』が全国でも通用することを確信した。次もいつも通り戦って勝ちたい」と意気込んだ。 ◇冷静な判断でチームリード 新居龍聖捕手(3年) 「この冬練習してきたことが出せて良かった」と、快勝を笑顔で振り返った。 初回、四球で出た走者の盗塁を刺して得点機を阻止。三回までにけん制などで塁上の走者3人をアウトにした。初の大舞台で浮足立ちそうなチームに落ち着きを与え、打っても4打数4安打。先制点を含めて3度、ホームに還った。 「どんなときも冷静に周りがよく見える。気配りも得意」と自己分析する。だが1年時、腰のけがなどを理由にいったんは内野手の練習もした。守備位置が変わった不安や周りを気遣う繊細な心の持ち主ゆえか、失敗を恐れて思う所に投げられなくなる症状に苦しんだ。今でも「調子が悪いときは投げるのが怖い」と、完全には克服できていない。 昨秋の新チーム発足後はけがも癒え、再び捕手一本に。正捕手を任された明治神宮大会の2試合で4盗塁を許し、「このままでは全国では通用しない」と危機感を持った。強肩とはいえない自分が盗塁を防ぐにはどうしたらいいか--。冬の間、球の持ち替え動作や足の運び方を試行錯誤し、捕ってからの送球が二塁に届くまでの時間が高校生には難しいとされる2秒を切るまでに成長した。目に見えて縮んだタイムが自信になり、精神的にもたくましくなって春を迎えた。 この日は配球面でも香川卓摩投手(3年)の直球を生かすために変化球を多く投げさせたり、相手の狙いの裏をかいたりと冷静さをみせた。4安打の活躍にも「自分の仕事は相手を抑えること。完封の方がうれしいし、次も守備からリズムを作りたい」。大舞台でまた一つ自信を積み重ねた「扇の要」は、早くも次戦を見据えた。【潟見雄大】 ◆スタンド興奮、喜び爆発 ◇OB声からし応援 ○…「がんばれ、その調子!」。アルプススタンドには準優勝を果たした第88回大会に出場したOBや応援団長らも駆けつけた。当時の主将で3番遊撃手だった米麦圭造さん(20)は「3年前の1打席目は今でも覚えている。リードしているが、最後まで気を抜かずにやってほしい」と話し、真剣な表情で試合の行方を追った。応援団長だった北村琴之介さん(20)も「今年の高松商は守備が固いと思う。ぜひ勝ち上がって優勝をつかんでほしい」と声をからして応援していた。 ◇花笑のお守り胸に ○…高松商のマネジャーは手作りのお守りを首から提げ、チームの勝利を祈った。鮮やかな青色の布地に、勝って花のように笑顔を咲かせたいとの思いを込めて「花笑」の文字を入れたもの。マネジャー3人で2月から約2週間かけ、野球部員43人分を手縫いした。選手たちもかばんの中に入れるなどして大切に持ち運んでいる。マネジャーの一人で、スタンドから試合を見守った土肥稜奈(どいあやな)さん(2年)はお守りを握りしめながら「けがなくいつも通りに楽しんで、勝利をつかんでほしい」とエールを送った。 ◇地元も歓喜の万歳 高松市常盤町1の瓦町フラッグでは、高松商と春日部共栄の試合を大型スクリーンに映し出すパブリックビューイング(PV)があった。駆けつけた地元のファンや高松商の卒業生、大西秀人市長ら約50人が高松商の初戦突破に歓声を上げた。 高松市が100インチのスクリーンを設置。駆けつけた人たちは香川卓摩投手(3年)が三振を奪ったり、選手がヒットを打ったりするたびに拍手を送った。市内から訪れた馬場香里さん(48)は「香川投手のピッチングがすばらしかった」と振り返った。 市は28日午前11時半開始予定の2回戦も、同所でPVを開催する予定。【小川和久】 ◇胸張り、堂々入場行進 開会式は午前9時にスタートした。高松商の選手は約2万8000人の観客が見守る中堂々と入場行進した。 昨年の優勝校、準優勝校に続いて南から順に登場し、高松商は10番目に入場。プラカードを持った登島玄貴(はるき)選手(3年)、センバツ旗を手にした飛倉爽汰主将(同)を先頭に、手足を高く上げきびきびと行進した。高松商の校名がアナウンスされると球場全体から大きな拍手が起きた。スタンドで見守った古市悠八選手(同)の父敦さん(49)は「小さいころから甲子園を目標に頑張っていたのでよかった。感無量です」と話していた。【潟見雄大】