「中島」「中嶋」、 なかじま、なかしま── 漢字や読みの違いを名字博士が解説します
中島・中嶋(なかじま)
「なかじま」は「中嶋」や「中嶌」と書く人もいます。この「嶋」や「嶌」を「島」の旧字体であると思っている人も多いのですが、実は新旧という関係ではありません。異体字と言って、「島」の違う書き方の一つです。 江戸時代以前には学校で正しい漢字を習う、という機会はありませんでしたから、いくつか違う書き方のある漢字というのは珍しくありませんでした。 「中島」は地名や地形に由来する名字です。各地に「中島」という地名があり、そこをルーツとする「中島」さんがいました。 また、島が複数あれば、その真ん中にある島を「中島」といいます。この「島」というのは海に浮かんでいる島だけではなく、平地の中にある小高い所も指しました。こうした場所に住んだ人も「中島」を名乗ったのです。 ところで「中島」という名字は、九州から山口県にかけての地域では「なかしま」と濁らないことも多いです。愛知県では尾張地方にかつて「なかしま」と濁らない中島郡がありました(現在は消滅)。そのため、同じ愛知県内でも、尾張地域では「なかしま」、三河地域では「なかじま」と読む人が多くなっています。 全国的には関東から東海にかけてと、九州北部に多く佐賀県では第5位の名字となっています。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家 1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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