「中国が改修」セルビアの駅崩壊で高まる不信感 「一帯一路」の一環、不透明さに市民らが抗議デモ
この工事に関する情報の不透明性も、国内で批判の声が高まる要因の1つとなっている。ノヴィサド駅の改修は、中国政府が進める「一帯一路」構想の一環としてセルビアの鉄道インフラをアップグレードする計画の一部に組み込まれ、2021年からスタートした。当局は、改修工事はヨーロッパ基準を満たしたものだったと説明している。 しかし、中国のセルビアへの投資、とくにインフラや鉱業に関する活動では、しばしばその不透明さに対する論争が巻き起こっている。
今回事故があったノヴィサド駅の改修工事に関連する文書は、内容がすべて機密扱いと報じられている。2021年に出された建設許可では、駅のどの側面が再建されるかについての具体的な記載がなく、透明性に関する懸念が生じていた。「ノヴィサド駅の地下道と天蓋の拡張に適応するための建築プロジェクト」と題された資料には、多数の補足資料が含まれていたものの、詳細な説明が欠けていたことが分かっている。 ■中国―欧州貨物列車は好調だが…
何もやましいことがないのであれば、情報を開示すれば疑惑はすぐに晴れるであろうが、こうした点が中国に対する不信感の増大と、今回の事故に対する疑惑に拍車を掛けている。 一帯一路構想の下、中国は参加国への投資を積極的に行い、その中核となる中国とヨーロッパを結ぶ貨物列車、トランス=ユーラシア・ロジスティクス(中欧班列)は東西間の物流で大きな効果を上げている。 一方で、関係国とのトラブルも各地で発生している。とくに途上国では、融資を受けたものの多額の債務を返済できず、港湾などの土地などを取り上げられるといった「債務の罠」の問題が指摘される。経済回復を狙ってG7(主要7カ国)の中では唯一参加していたイタリアは、かえって貿易赤字が拡大して政財界から批判の声が上がり、中国からの投資も停滞したことから、2023年に離脱を正式表明した。
鉄道業界においては、EU諸国のほとんどが慎重姿勢の中、ハンガリーが車両メーカー中国中車(CRRC)の工場を誘致するなど、中国製品を積極的に導入する動きを見せている。ハンガリーのブダペストとセルビアのベオグラードを結ぶ高速鉄道も中国企業の手によって建設されており、車両もCRRC製車両の導入が予定されている。 だが今回の事故により、セルビア国内ではこの高速鉄道に対する不安や疑念の声も上がり、中国に対する不信感が高まっている。