設備の老朽化、コロナ禍のダメージ、人口減少――逆境の地方鉄道が模索する「稼ぎ方」
鉄道開業150年の節目の年に当たった2022年。JR各社などは新幹線や特急乗り放題といったイベントを打ち出すなど、あまたの企画を練り込み盛り上げを図った。その一方、地方鉄道は経営の厳しさが顕著だ。特にいすみ鉄道のような第三セクター鉄道(国や地方公共団体と民間が共同出資して運営する鉄道会社)は、危機的な状況から抜け出せていない。新型コロナウイルスの影響で交通への意識が変わりつつある今、改めて三セク鉄道の状況を探った。(フリージャーナリスト:栗田シメイ/撮影:菊地健志/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
キハ28「最後の日」
「カランカラン」 「ジュルジュルジュルー」
独特な甲高いディーゼルエンジン音が、駅構内に響き渡る。その音に呼応して、カメラを構えた人々の波が動く。城下町の風情の中に牧歌的な雰囲気が共存する、千葉県大多喜町。都会の喧騒から離れた地に似つかわしくないほど、この日は人が群れをなした。 11月27日、日本に残っていた最後の“急行列車” 「キハ28-2346」の定期運行が終了した。 千葉県・大原-上総中野間を結ぶこの列車は、キハ58系と呼ばれる急行形気動車(急行用ディーゼルカー)の一種で、1961年に登場。キハ58系は全盛期には1800車両ほどが全国に存在していたという。「いすみ鉄道」を走るキハ28は、国内に残る58系で唯一の営業車両だったが、60年近い歴史の幕を閉じた。
この日、ラストランを目に焼き付けるため、夏頃から多くの鉄道ファンや“撮り鉄”が集まった。停車駅にはそれぞれ優に100人以上が集い、車両には130人の定員制限を大きく超える人々が列をなした。走行ポイントにも人が大挙して訪れ、「ありがとう」というプラカードを片手に見送る者もいれば、涙を浮かべる人も散見された。はるばる札幌市から来た堀合翔真さん(20)は、こう別れを惜しんだ。 「全国でいろんなオールド車両に乗ってきましたが、キハ28が一番、急行列車の味わいを感じられた。現役時代を知らない僕たちの世代でも、古き良き時代の鉄道文化を感じることができる車両でしたね」