「コロナ禍で京都の料亭は1軒もつぶれていない」というウワサは本当か? 老舗料亭の三代目が語る、創業「一代目」と「ぼん」の経営の違い
外国人客を4割以上取らない
先に、京都の料理屋、料亭は町衆と共にある、という話をさせてもらいましたが、その京都の町衆は、「コロナ禍」のなかでこんなことを言うてました。 「コロナのこんな時期やけど、カウンターやなくて座敷やったらええんちゃうか」 「大勢で行くな言われてるけど、嫁さんと2人やったらええのんちゃうか」 小池百合子都知事が聞いたら目をむくかもしれませんけど、こんなふうな、いかにも京都の人間が考えそうなことを言いながら、私らの店に来てくれるお客さんが「それなり」にいたわけです。 まあ、街もいい具合にすいてるし、店の予約も取りやすいし、ということで、コロナ禍の間もそういったお客さん達にしっかり支えていただきました。 2023年5月の5類移行から、コロナも一段落、しかも円安やということで、京都はまた、あっという間に外国人でいっぱいになってしまいました。でも、これは以前からですが、私らは外国人客を4割以上取らないことにしています。 なぜか。答えはシンプルです。そうじゃないと、地元のお客さん、日本のお客さんにうちの店を楽しんでもらえなくなる。地元の人、日本のお客さんが入れない店って、いくら流行っていても、それはおかしいのとちゃうか、と思てます。 まあ、えらそうに言うわけではありませんが、そういうふうに決めておかないと「外国人のための施設」になってしまう。私は、それはあかんわ、と思う方なんです。 いまは、外国からのお客さんがぎょうさんお金を払ってくれる。向こうの人にしてみれば、日本に来たら円安の時代ですから何でも安い。 私もこの前台湾に行ってきましたが、日本の国力の低下を実感してきました。昔は円高でしたから台湾にしろシンガポールにしろ何でも安く買えるという感覚でしたが、いまは全く逆。向こうの人達が日本に来て、京都に来て、どんどん円を使うてくれはる。 ですから、外国人を相手にした方が店は儲かります。当然の話です。 でも、そうやって儲かって何やねん、という話もあります。私は、こっちの話の方に乗ります。儲かっても、それは何のためやねん、誰のためやねん、というわけです。