名鉄百貨店も閉店へ 電鉄系「大衆百貨店」の黄昏
呉服系の多くは江戸時代や明治時代に創業し、昭和初期に百貨店に業態転換している。電鉄系の元祖である阪急百貨店は1929年開店、それに触発された東急百貨店は34年開店(後に合併した白木屋は除く)だが、それ以外のほとんどの電鉄系は戦後の高度成長期に豊かになった大衆に向けて百貨店に進出した。
戦前からある呉服系は富裕層の顧客基盤を保ちつつ、戦後豊かになった大衆にウイングを広げた。一方、後発の電鉄系は当初から大衆からの支持を集めて発展した歴史がある。ターミナルに立地するため客層も幅広い。所得が上昇し、背伸びした消費を楽しめるようになった大衆にとっての「ハレの場」だった。
これも明確に二分できるわけではないが、歴史のDNAは案外いまも継承されている。関西で圧倒的なブランド力を誇り、百貨店売上高で国内2位の位置にある阪急本店(阪急うめだ本店、阪急メンズ大阪)でさえ、「長年、富裕層向けの外商に関しては呉服系にかなわない部分があった。外商で戦えるようになったのは12年に建て替え開業してからだ」(関係者)と振り返る。
百貨店は「一億総中流」と呼ばれた時代に全盛期を迎えた。全国百貨店売上高は91年の9.7兆円をピークに2023年には5.4兆円まで下がった。この30年間で「ユニクロ」に代表されるカテゴリーキラーが台頭。また2000年の規制緩和によって全国に大型のショッピングセンターが乱立した。特に百貨店の最大の稼ぎ頭だった衣料品は競争力を削がれていった。百貨店の店舗数は直近の20年間で4割も減っている。
一方で、コロナ後に大都市の旗艦店ではバブル期を越える過去最高売上高が相次いでいる。24年度の見通しでは、売上高1位の伊勢丹新宿本店は4240億円(コロナ前の19年度は2740億円)、2位の阪急本店が3588億円(同2412億円)と大きく伸びる。JR名古屋高島屋、松屋銀座本店、三越銀座店、高島屋新宿店、大丸神戸店なども過去最高を更新する見通しだ。