名鉄百貨店も閉店へ 電鉄系「大衆百貨店」の黄昏
新宿駅の小田急百貨店は、駅直結の本館を22年に閉めた。これも親会社・小田急電鉄の再開発に伴う措置だった。現在は別館(ハルク)でラグジュアリーブランド、化粧品、食品の3分野に特化した8割減の売り場で営業している。本館の跡地には29年に複合ビルが完成し、低層部に商業施設が入る予定だが、小田急百貨店が入るかは言及されていない。
同じく新宿駅では京王百貨店を含む周辺エリアの再開発も発表されている。親会社・京王電鉄とJR東日本などによる大規模プロジェクトで、28年から段階的に開業して完成は40年代になる。やはり低層部は商業施設になる見通しだが、そこに京王百貨店が入るかは決まっていない。
池袋駅西口でも再開発が予定されており、現在の東武百貨店の建物が対象エリアになる。親会社の東武鉄道の動向に注目が集まる。
いずれも再開発後に新しい商業施設が入ることは決まっている。商業施設は集客装置として欠かせないからだ。しかし大家である鉄道会社は消化仕入れで売れ行きに大きく左右される百貨店よりも、テナントから安定した家賃収入が得られるショッピングセンターを選ぶ公算が高い。本業の鉄道が少子高齢化で長期的に利用減が避けられない中、百貨店に固執する理由はない。
富裕層に強い「呉服系」、大衆に支持される「電鉄系」
電鉄系百貨店の事業縮小は鉄道会社の構造改革だけの話ではない。日本の社会構造の変化の反映ともいえる。
日本の百貨店には2つの系統がある。一つは呉服屋を祖業とする「呉服系」。三越、伊勢丹、高島屋、大丸、松坂屋、そごう、松屋などである。もう一つが鉄道会社が沿線価値を高めるためターミナルに作った「電鉄系」。こちらは阪急、東急、近鉄、西武、小田急、京王、東武、阪神、名鉄などである。企業再編もあって現在は必ずしも呉服系・電鉄系に二分できるわけではない。たとえば西武は発祥こそ電鉄系だが、そごうとともに06年にセブン&アイ ホールディングス傘下になり、23年には米投資ファンドに売却された。