3度の決定機逸もPK戦5人目のキッカーで勝利を決める一撃!明秀日立FW竹花龍生「ゴールは次に取ってあるので、待っていてください」
[1.2 選手権3回戦 明秀日立高 1-1 PK5-4 帝京高 U等々力] 「押し込める時間で、したたかに2点目を獲りたかったなと。そこはエースの竹花に『もうちょっとやってもらいたい』と言おうと思っています(笑)」 【写真】武藤嘉紀が初めての…ファン歓喜「息子くんそっくり」「親子でイケメン」「めっちゃ可愛い」 明秀日立高(茨城)を率いる萬場努監督は、名指しでキャプテンの奮起を促す。エースで10番を背負うFW竹花龍生(3年=JFC FUTURO出身)の真価は、まだまだこんなものではない。 「帝京さんは上手さがあって、ボール保持率は相手の方が高かったですけど、最終的に勝った方が強いということになると思うので、何とか勝てて今は本当にホッとしています」。取材エリアに現れた竹花は、そう話して安堵の表情を浮かべる。 チャンスは何度も10番の元に訪れていた。1点をリードしていた後半4分。FW保科愛斗(3年)が裏へ送ったパスに抜け出すと、マーカーを剥がして左足で放ったシュートは相手GKがファインセーブ。15分にもMF貝原利空(2年)が相手ラインの背後にボールを送り込み、フィニッシュまで持ち込むも軌道は枠の左へ外れてしまう。 チームは29分にカウンターから同点弾を献上。追い付かれて迎えた最終盤の40+2分。ここも竹花に絶好の勝ち越し機が巡ってくる。貝原のシンプルなパスから、左サイドを縦にドリブル。対面したDFを巧みに外し、右足を振り抜いたものの、ボールはクロスバーの上へ消えていく。 「相手の最終ラインは凄くハイラインだったので、オフサイドに掛かる回数も多かったんですけど、背後の抜け出しはチームのプランとしても持っていたので、そこで何本か抜け出したシーンはあって、決め切れるシーンもあったんですけどね。『自分はこのぐらいの実力だよな』と痛感しつつも、チームメイトへの申し訳なさもありました」。エースが“もう1点”を決め切れず、勝敗の行方はPK戦へと委ねられる。 1人目は両チームともに成功すると、帝京2人目のキックをGK重松陽(3年)がストップ。以降は双方のキッカーが成功を続ける中で、5人目に指名されていた10番に『決めれば勝利』の順番が回ってくる。 緊張感に包まれた11メートルの勝負。ただ、竹花の頭の中はすっかりクリアになっていた。「もう『決めれば勝ちというシチュエーションを、みんなが取っておいてくれたな』と感じていましたね。自分が目立てるところはあそこしかなかったので、落ち着いて蹴ろうと思っていました」。 1つ深呼吸。いつもの助走から左スミに蹴り込んだボールは、GKの逆を突いてゴールネットへ突き刺さる。「もう何も考えられなくて、とりあえず応援団の方に行きました」。チームメイトたちが次々と駆け寄ってくる。最後の最後でキャプテンとしての仕事を果たした竹花は、等々力の空に向かって咆哮した。 託されたキャプテンという役割とは、1年を掛けて向き合ってきた。「やることのタスクが多くて、その中でも自分と向き合って結果を残していかないといけないというところに難しさを感じていますけど、そこは自分にプレッシャーを掛けながらやっています」。 昨年度のインターハイでは、ジョーカー起用という立ち位置で日本一を味わっているだけに、今年はチームの中で求められる役割も少なくない。ゲームメイクに関わり、ボールも収め、フィニッシュシーンにも顔を出し、10番としての責任感も背負い続けてきた。夏過ぎに竹花が話していた言葉を思い出す。 「今年は前で身体を張ったり、トップ下でパサーになったり、シュートを打ったりと、自分でも去年よりはプレーの幅が広がったなと感じています。でも、ゴール前でのクオリティとか怖さを出せる選手はもっと質が高いと思うので、そういう繊細なところももっと突き詰めてやっていかないといけないのかなと思っています。まあ、大変ですね」。 それでも、自分がやるしかない。のしかかる重圧を跳ねのけて、全国切符を掴み取った選手権予選の決勝では涙を流すシーンも。3年間をともにしてきたみんなで戦う最後の大会。そう簡単に終わらせるわけにはいかない。 神奈川出身の竹花にとって、初戦を戦ったニッパツ三ツ沢球技場は小さいころから憧れていた舞台。実際にそのピッチに立ったからこそ、改めて思い直したことがあるという。 「小さいころの夢が叶って、自分としても本当に嬉しいですし、昔の自分みたいに夢を持って見に来てくれている子たちが、今度は自分を見てサッカー選手になりたいとか、高校選手権に出たいとか、少しでもそういう想いを持ってくれたら自分としては嬉しいです」。 次の準々決勝を超えれば、明秀日立にとって初めての選手権ベスト4を引き寄せると同時に、国立競技場で戦う権利も手にすることになる。強気なキャプテンは、少しだけニヤリと笑いながら、こう言い切った。「ゴールは次に取ってあるので、待っていてください」。 ユニフォームへ“2つ目の星”を刻み込むための、大いなるチャレンジ。明秀日立のキャプテンで、エースで、10番。竹花龍生の真価は、まだまだこんなものではない。 (取材・文 土屋雅史)
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