UAEでのプレーを最も知る男、塩谷司の4年越しアジア杯への思いと役割
アブダビ国際空港に張られたクラブの宣伝用のポスターに起用され、スタジアムではスタンドにいる現地の子どもたちが「シオ! シオ!」と大きな声で呼びかける。 それだけで、彼がこの地でいかに愛されているかが伝わってくる。 UAEで開催されているアジアカップに参戦中の日本代表23人のうち、実に13人が海外でプレーしているが、その中で唯一ヨーロッパのクラブに所属していない男――塩谷司のことである。 UAEのアル・アインに17年6月から所属する塩谷は、まさにクラブの本拠地で開催されたグループステージ第3戦のウズベキスタン戦で今大会初出場を飾った。起用されたのは、本来のセンターバックやサイドバックではなく、「アル・アインで6、7試合くらい」しかやっていないボランチだったが、不慣れな様子は一切見せず、ボールを奪い続けると、1-1で迎えた58分、大仕事をやってのける。セットプレーの流れから、左足で豪快なミドルシュートを叩き込んだのだ。 「頭の中が真っ白になりました。ボランチだったのでチャンスがあれば、どうにか上がってミドルシュートを打ちたいなって思っていた。セットプレーだったので自分の良さを出せました」 ミックスゾーンで大勢の記者に囲まれた塩谷は、さらに嬉しそうに続けた。 「家族も友人も来ていましたし、自分にとって本当に忘れられない1日になりました」 塩谷にとって、アジアカップでの活躍は4年越しの目標だった。 ハビエル・アギーレ監督に率いられた4年前のオーストラリア大会でも塩谷はメンバー入りを果たしている。このとき日本代表は今回同様、グループステージで2連勝を飾り、3戦目が消化試合となった。メンバーの入れ替えが予想されたが、1、2戦目とスタメンは変わらず、結局この大会で塩谷に出番が回ってくることはなかった。 「なんでだよってすごく、なんて言うんですかね、イラつくことがあった」 その後、15年10月を最後にA代表からは遠ざかったが、16年8月のリオ五輪にオーバーエイジ枠で選出された。ディフェンスリーダーに指名され、今大会にも出場している遠藤航、南野拓実、室屋成らとともにオリンピックの舞台に立った。 ところが、初戦のナイジェリア戦での4-5の敗戦が響き、グループステージ敗退を喫してしまう。塩谷自身も初戦で失点に絡むミスを犯していたため、最終戦でスウェーデンに勝利したものの、試合後、責任を噛み締めていた。 「このチームのことがすごく好きだったし、なんとかしてチームの力になれたら、と思ってプレーしていましたけど、全然力になれず本当に申し訳ないなと思います」 UAEへのチャレンジを果たすのは、その翌年のことである。