ソフトBの”絶滅危惧種”高橋礼が子供達に語った「僕がアンダースローになった理由」
「東京五輪へ向けて頑張る、というわけではないので。まずはシーズンの序盤ですね。東京五輪まで数ヶ月はあるので、そこでしっかり結果を残して『よし、大丈夫だ』と満場一致で五輪代表に選ばれるような成績を残せるように頑張る、というところでしょうか」 一軍で未勝利だったルーキーイヤーのオフに大抜擢された侍ジャパンへは、今シーズンの開幕前、そして千賀滉大に次ぐエースとして3年連続の日本一獲得に貢献した直後に開催された、WBSC世界野球プレミア12でも名前を連ねた。屈強な外国人選手を幻惑させ、沈黙させる存在として、開幕まで約7ヶ月に迫った東京五輪でも投手陣のキーマンを託される可能性もある。 「出てほしいと言われた場面で、結果を残すだけだと思っています。それでもアンダースローという武器が一番なので、それを大いに使ってバッターを打ち取る。それだけでなく、自分が投げた後に目先を変えて次のピッチャーに繋ぐという意味でも、自分が上手く間に入っていきたい」 優勝旅行先の常夏の島ハワイから前日に帰国したばかりの高橋は、ちょっぴり日焼けして精かんさを増した表情を引き締めた。日本一の余韻に浸るオフは帰国とともに終わりを告げ、その脳裏にはモットーである「現状維持は退化」という言葉がすでに駆けめぐっている。 「来年は先発としてさらに期待される立場になるので。完投できる体力をもったうえで、7回、8回と投げられるイニングを少しずつ増やせていければいいかな、と」 23試合に先発した今シーズンの完投数はゼロで、レギュラーシーズンの最終戦でようやく規定投球回数の143イニングに達した。ただでさえ、アンダースローは身体に大きな負担がかかる。覚悟して挑んできたハードルを越えて、さらに進化を遂げている姿を思い浮かべながら、高橋はつかの間のオフも自分自身を鍛えあげていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)