主人公の「闇落ち」から世界での快進撃が始まった…日本よりも海外人気がすごい講談社発のファンタジーアニメ
■きっかけはエレンの闇落ち では潮目が変わったのはいつだろうか。 図表3からわかるように2021年1~3月の『進撃の巨人 The Final Season』(第4期)である。 『進撃の巨人』は2013~19年と2021~24年でアニメ制作会社が変わっている。当初のWIT Studioは『甲鉄城のカバネリ』『ヴィンランド・サガ』など他の人気作も抱える中でオリジナル作品に集中したいとアニメ第3期を最後に降板決定となった。 あまりの作画労力にコストが合わないといった点や、まだ海外配信市場が顕在化していないなかで円盤(ブルーレイやDVD)売上が2期で急落したことなども影響していたのかもしれない。 「The Final season」を担当したのは、2011年設立と新興だったMAPPAだった。結果的に、彼らにとっては出世作となった。その「怨念」ともいえる制作に向き合う執拗さは、2023年2月放送のNHKのドキュメンタリー番組『100カメ』からも垣間見える。 「The Final season」は「壁の向こう」から始まる。壁の向こうには海があり、海の向こうには自由がある。そうやって信じてきたエレンらエルディア人たちは、海の向こうにはさらに敵軍が存在していたという衝撃の事実を目の当たりにする。 なぜ巨人が生まれたのかの謎に迫るクライマックスのシーズンに入るこの転換はエレンが“闇落ち”していく作品のステージを挙げたものであり、原作でも世界観ががらりと変わる。 ■「世界一求められたTVシリーズ」に このタイミングでのアニメ制作会社変更はリスクも大きかったが、逆にここでしか起こりえなかった。結果からみれば、2020年が大きく「進撃の巨人」を再起動させるきっかけにもなったといえる。 日本ではキャラクターデザインが変わったことなどで批判も少なくなかった。だが、MAPPA版は北米を中心に米国、欧州、南米など世界中での進撃需要を生み出し、ついにはParrot Analysis社の「Global Demand Award2021」で並み居る作品(『The Witcher』、『The Walking Dead』など)をおさえて「世界でもっとも求められたTVシリーズ」に輝いた。 『進撃の巨人』は2010年末の2巻だけで100万部(50万部/巻)、2013年アニメ直前で1200万部(140万部/巻)となっていたところから2014年4月には第13巻がアニメ1期の好調もあり、講談社史上最高の初版275万部を突破。 この2014年ごろをピークに、2017年~19年の第2期・第3期は『僕のヒーローアカデミア』『鬼滅の刃』『呪術廻戦』などのほかの巨大ヒット作に話題負けをするようにもなり、コミックスの売上も100万~150万部と落ち着いてきていた。 2015年11月には5000万部到達していたが、2019年末の1億部到達に向けてはむしろ日本より海外の貢献シェアのほうが大きくなっていた感覚である。 それが2021年1~3月の「The Final Season」で大爆発するのだ。海外において。