都知事選出馬で注目! 広島県安芸高田市長・石丸伸二、地元徹底取材で見えた"バズ市長"の意外な正体
石丸市長が子供ウケするのには別の背景もある。 市長はこの4年間で不採算事業を廃止するなど財政改革を進め、財政悪化を食い止めることに成功。一時的ではあるが、21年度には実質単年度収支を黒字化し、前出の経常収支比率は98.2%(19年度)から11年度以降で最低値となる88.6%(21年度)まで改善、危険水域を脱した。 財政の余力が少し生まれたところで、石丸市長は自身が「未来への投資」ととらえる子供や教育の分野に予算を振り向けた。そこで、今年度から実現させたのが小中学校の給食費の無償化だ。 市によると、「子供ひとり当たりで、小学生は年間およそ5万4000円、中学生は7万円の負担軽減」となるだけに、保護者の多くは手放しで喜んだ。 教育面では、昨年から市内すべての中学・高校生に、リクルート社が運営するICT教材『スタディサプリ』を無償提供。AIが各生徒の理解度に応じた最適な課題を配信する機能があり、市内には進学塾が少ないため、「めっちゃありがたいっす!」(前出・男子高校生)と、利用する中高生には重宝されている。 ほか、石丸市長が兵庫県芦屋市の取り組みをヒントに実行した「生徒が決める100万円事業」というのもある。 これは、登録者数が全国の自治体で最多(約26.7万人)の市の公式YouTubeの収益を原資に、市内2高校の生徒会長へ応援補助金100万円を支給。使い道は生徒次第で、次世代のリーダー育成が事業目的のひとつだった。 支給先の1校は、自販機の設置などに充てるが、もう1校の向原(むかいはら)高校は音楽フェスを企画。同校でも自販機設置案が出たが、生徒会長の岸田光樹さん(3年)は音楽フェスにこだわった。 同校の生徒数は50人弱。「僕が通っていた市内の中学校の同級生で、この高校に来たのはふたりだけ」で、岸田さんも高校の存続に危機感を持っていた。 「だから今どきの中学生にムカ高(向原高校)の楽しさが伝わる音楽イベントがやりたかった」のだという。当時の校長からは「100万円は図書館の改装に使っては?」と横やりが入ったが、音楽フェスへの思いを伝えて押し切った。 「どんな相手でも自分の意見を貫き通す市長は、素直にカッコいい。自分もそうありたいです。市長がいなくなるのは残念ですが......」 そう話す岸田さんは、安芸高田市の職員になりたいそうだ。石丸イズムは次世代へ、といったところか。