都知事選出馬で注目! 広島県安芸高田市長・石丸伸二、地元徹底取材で見えた"バズ市長"の意外な正体
■石丸市長が市民に植えつけたもの 石丸市長はこの4年間で財政の健全化を一歩進めたが、その後も「このままでは20年後に市が潰れる」と言い続けている。昨年9月には、財政のさらなるスリム化を実現すべく、向こう10年間の公共施設の廃止スケジュールを示した。 これによると、今後3年間で公営団地や保育所などが廃止され、それ以降も集会所や市役所の支所などがなくなる。同スケジュールで示された廃止施設の数は100以上に及ぶ。 これには、「どこまで潰せば気が済むんじゃ!」と憤慨する市民もいれば、「考えた張本人が町からいなくなるんじゃ、こんな計画進まんじゃろ」と鼻で笑う市民もいる。その一方で、「石丸さんが言うんじゃけ、仕方ねぇ。この町が生き残るにはそれしかないんじゃ」と真摯に受け止める市民も少なくなかった。 彼らに共通するのは市の財政状況を把握している点だ。50代の会社員の男性がこう話す。 「今のまま何もしないと施設の維持管理費が毎年30億円かかる。安芸高田市の財政規模は120億円、その4分の1が施設を維持するためだけに毎年減り続けたら、この町は潰れる。 でもスケジュールどおりに施設を廃止にしたら、維持管理費は年10億円まで圧縮できて、市の財政には大きな助けになる。石丸さんはそう言っとった。なら、私たちも覚悟を決めるしかないです」 石丸市長を支持する市民の多くは、市長が開催する財政説明会に参加している。財政課によると、説明会の開催数は21年と22年が7回、23年は3回で、各会場の来場者数の総計は約1500人。説明会の模様はYouTubeにもアップされており、視聴回数は総計で100万回を超えている。 市内外の多くの人が聞くその説明会では、「市長自ら、専門用語を噛み砕き、わかりやすく数字を示して、市の財政が今どれだけ危機的な状況にあるか、なぜ20年後に町が潰れるのか?をとうとうと説いていた」(前出・50代会社員)という。 ベテラン市議、熊高昌三氏がこう話す。 「私は、石丸市長の最大の功績は、市の財政状況をつまびらかにする説明会を地道に開催し続けることによって、多くの市民に危機感を植えつけたことにあると思っています」 もうひとり、石丸市長と酒席を共にしたことがあるという、ある安芸高田市議がこう話す。 「議会などで強い言葉で相手を詰める石丸さんには、度が過ぎていると思うときもありましたが、一緒に飲んだりしてるときの普段の姿は、気のいいあんちゃん。石丸さんは市長を演じているんですよ、無名のこの町の知名度を高めるために。 私が思うに、石丸市長が取った戦略は弱小集団の奇襲です。こんな小さな自治体の戦い方としては、それしかなかったんだと思います」 そんな市長が挑む、日本最大の自治体・東京の首長選挙。その行く末に注目したい。 取材・文・撮影/興山英雄 写真/時事通信社