リターン1900%超の英ファンド、投資先の日本で長い沈黙破る
(ブルームバーグ): スティーブン・バット氏率いる英資産運用会社シルチェスター・インターナショナル・インベスターズは過去30年近く、ほとんど目立たない行動をしてきた。ウォーレン・バフェット氏の伝統を引き継ぐ長期投資家として、自らが注目を集めなければならない理由はほとんどないとの姿勢だった。
シルチェスターは、世界の一部優良企業の株式をひっそりと購入し、その価値が高まるのを見守り、1900%を超えるリターンを積み上げた。モルガン・スタンレーの元バンカーであるバット氏は、その過程で大富豪になったが、投資業界関係者も一般の人も、大成功を収めたシルチェスターからの情報発信を耳にすることはほとんどなかった。
400億ドル(約5兆9000億円)余りの資金を運用するシルチェスターは最近、投資先に変化を求めて公に意見することが増えている。
シルチェスターの最大の投資先市場の一つである日本では、資本配分の改善と株主還元の増加を企業に求めている。同社の要求は、保守的な地方銀行などの投資先の注意を引いた。
シルチェスターは通常、公の場で目立つ行動をしないが、極端なケースではそうすることもあると、同社の担当者はコメント。過去に他社に対しても同じことをしてきたと付け加えた。同社がメディアにコメントを提供するのはまれだ。
シルチェスターは、運営方法は何も変わっていないとしているが、同社の動きおよび企業側の対応は、日本の株式市場がどのように進化しているかを示す例の一つだとアナリストらは受け止めている。約10年前に始まった企業統治ルールの見直しにより、最高経営責任者(CEO)は株主の声により耳を傾けるようになった。これは日経平均株価が先月、1989年に記録した最高値をついに更新する大きな理由の一つにもなった。
マネックスグループの専門役員、イェスパー・コール氏は、日本企業が自社株買いや増配を求める声に「今や聞く耳を持つようになっている」と指摘。「何かを解除するのに時間がかかることは従来の日本と変わらないが、いったんコンセンサスが得られれば、ボールはすぐに動き出す」と述べた。