リターン1900%超の英ファンド、投資先の日本で長い沈黙破る
1994年にモルガン・スタンレーの元同僚とシルチェスターを創設。社名は古い英国の村から取った。米国外の過小評価されている企業の株式を購入するといったモルガン・スタンレー時代と同様の投資アプローチを採用した。
シルチェスターは財団や年金基金、富裕層などから資金運用の委託を獲得。事情に詳しい関係者によれば、現在もほとんどは米国の顧客だ。情報が公になっていないことを理由に匿名で語った。
マイケル・ビンズ氏は、2008年にテキサス工科大学に提出したシルチェスターに関するアナリスト説明ノートで、「国際株式投資だけに集中することで、このアセットクラスで他の追随を許さない専門知識を身につけることができている」と評価した。ビンズ氏は当時、ハモンド・アソシエイツのシニアリサーチアナリストを務めていた。
バット氏らがモルガン・スタンレーで担当していた国の一つが日本であり、シルチェスターを設立した当時、同社に支援を提供した企業には朝日生命保険が含まれた。現在、シルチェスターは日本株を数十銘柄保有している。最も多くの保有している銘柄にはホンダや電通グループ、三井住友トラスト・ホールディングス、野村ホールディングスが含まれる。
約6年前、バット氏は自身に影響を与えた投資について、珍しく洞察を披露。バリュー投資の父として知られる故ベンジャミン・グレアム氏の業績について、グレーのスーツに青緑色のハンカチーフをまとい、ロンドンで満員の聴衆を前に講演した。
CFAインスティテュートの英国支部が主催した2018年のイベントの資料によれば、バット氏はグレアム氏の著作を真剣な投資家にとって「宝の山」だと評価。「彼は永続的な原則を打ち出した。それから大きく変わったとは思えない」と語った。
1994年12月末にシルチェスターの国際株式プログラムに100ドル投資していれば、昨年末時点で投資管理手数料を差し引く前で2031ドルとなっていた。これは1931%、年10.9%のリターンで、欧州とオーストラレーシア、イスラエル、極東の先進国株式をカバーするMSCI EAFE指数を上回るパフォーマンスだ。