すぐパニックになる人の特徴は? 「ワーキングメモリ」の問題
多様性の時代といわれて久しいが、期待されて職場に入ったのに、いまひとつ評価が上がらない人がいる。理屈ではなかなか理解できない人たちの深層心理を分析し、その思考法を受け入れるヒントを提供する。今回は、すぐにパニックになってしまう人の特徴を分析する。日経プレミアシリーズ『「指示通り」ができない人たち』(榎本博明著)より抜粋。 ●接客中に他のお客に怒鳴ってしまう 落ち着いて対処すれば、どうということなくこなせるはずなのに、何かとすぐにパニックになる従業員に手を焼いているという管理職がいる。 「ふだんは特に落ち着きのないタイプというわけでもないんですよ。むしろおとなしいし、落ち着いてるほうじゃないかとも思うんですけど……でも、何て言うか、気持ちに余裕がないんですかね。ちょっとしたことでパニックになるんです」 ちょっとしたことでパニックになる。例えば、どういうことがあるんでしょうか? 「彼女の仕事は接客なんですけど、例えば、ひとりのお客の相手をしているとき、別の客から話しかけられると、『すみません、今、別のお客様の対応中なので』っていう感じで、突き放すような雰囲気になっちゃうんです」 でも、別のお客の対応をしているなら、それが終わるまで待ってもらうしかないですよね。言い方が突き放すようなきつい感じになる、っていうことですかね? 「言い方もそうなんですけど……えーと……例えばですね、お客の対応中に、別のお客からトイレの場所を聞かれたなら、ちょっと話を中断して、トイレの場所を教えればいいじゃないですか。それができないんです。服を手に取ってる別の客から、『この服のサイズはどこに書いてあるのかしら?』って聞かれたときも、別の客の対応中だからって対応しないんです。ちょっと中断してタグの場所を教えればいいじゃないですか」 なるほど、そういうことですか。 「臨機応変の対応ができないから困っちゃうんです」 今挙げられたケースなどに関して、簡単に教えるだけで済むのだから、ちょっと中断して対応するように、といったアドバイスはされたんですか? 「もちろんです。そういうことが同僚たちから報告されるたびに注意、っていうか、アドバイスしてるんですけど、一向に直らないんです。っていうより、前よりひどくなってるようなんです」 前よりひどくなってる? 「ええ。この前なんか、お客の対応中に別のお客から話しかけられたとき、『今、別のお客様の対応中なんです!』って怒鳴るように言ったらしいんです。それで、そのお客を怒らせてしまって、ちょっと大変だったんです」 両方のお客の対応をしないといけないと思うことで、パニックになっちゃったんでしょうかね。 「あっ、そういうことですか!」 同時に複数のことを考えるっていうのは、多くの人はある程度はできるんですけど、ワーキングメモリ(後述)の容量が小さい場合は、それがとても難しいんです。その人は、接客中でなく、何か机に向かって作業する際に、周囲の人の話し声が聞こえる状況だと集中できない、っていうようなことはありませんか? 「あります、あります。売り上げとかの入力作業をしてるときに、周りの同僚たちがちょっと雑談をして笑っていたら、突然『静かにしてください!』って怒鳴ったんですよ。私もたまたまその場に居合わせて、びっくりしました。日頃穏やかな人柄なので、みんなも相当驚いたと思います」