すぐパニックになる人の特徴は? 「ワーキングメモリ」の問題
スマホが近くにあるだけで能力が低下
スマホが近くにあると認知能力が低下し、課題遂行の成績が低下することは、様々な実験で証明されている。その場合、スマホを気にするせいで気が散って集中力がなくなるだけでなく、気にしないようにしようといった努力に心のエネルギーが費やされ、本来は課題に費やすはずのワーキングメモリの一部がその努力のために消費される。その結果、本来の課題に振り向けることができるワーキングメモリが足りなくなり、勉強にしろ仕事にしろ支障が出てきてしまうのである。 先ほどのケースで言えば、目の前の客の対応をしているときは、その客に商品の説明をしたり、質問に答えたりすることにワーキングメモリのほとんどを費やしているため、別の客から声をかけられた際に、その言い分を聞いて適切な対処をするだけのメモリ容量が足りないのだ。 別の客にちょっとした案内をする気持ちの余裕もないように見えるのは、ワーキングメモリの容量が足りないため、相手の言い分を聞いて対応することができないからだ。それなのに、簡単な用件なら応対中の客とは別の客の問いかけにも答えないといけないと思うことで、パニックになってしまうのである。 ●2つのことは分けて考える 理由が分かったからといって、いきなりワーキングメモリの容量を増やすのは難しい。そこで大切なのは、同時に2つのことをしないようにすることである。 例えば、応対中の客には「すみません、少々お待ちください」と言って、その客のことはひとまず頭の中から追い出し、声をかけてきた客の問いかけに集中し、簡単な案内をする。簡単に済みそうにない場合は、「申し訳ありませんが、先客がいらっしゃいますので、しばらくお待ちいただけますか」と丁重な姿勢で断る。それから前の客に向き合い、応対をする。 万一、何を説明していたか忘れてしまったら、「申し訳ございません。どこまでご説明していましたでしょうか」などと問いかければ、必要な説明を向こうから求めてくるはずだ。このような手順をアドバイスしておくのがよいだろう。その手順を本人に図解式にメモさせるのも、頭に定着させる助けになるだろう。 プレゼンの場合も、相手の質問に耳を傾け、理解しようとしながら、同時にどのように説明するかを考えるとなると、ワーキングメモリの容量が足りなくなるため、パニックを起こすのである。その対処としては、前もって想定されるあらゆる質問を網羅し、その回答を簡単にメモしておくようにアドバイスするのがよいだろう。まずは相手の質問に集中してから、それに対応する回答の見当をつけ、それに近いメモを見ながら回答すればよい。 いずれの場合も、同時に複数の課題遂行をしようとせずに、まずは1つのことに集中すること、そのためにメモなど外部記憶装置を用いるのも有効なことを教えてあげるべきだろう。