「惑星」の新たな定義案が発表される 数値的な定義と分かりやすさを両立
■新たな惑星の定義の最終案を作成
最終的に3氏は問題点を改善した最終案を作成しました。それは以下の通りです。 惑星とは、次のような天体である。 (a) 1つまたはそれ以上の恒星、褐色矮星、または恒星の残骸(訳注: コンパクト星)を周回している。 (b) 質量は10の23乗kgよりも大きい。 (c) 質量は木星の13倍(2.5×10の28乗kg)よりも小さい。 衛星とは、惑星を周回する天体である。 最終案では定義内の数値がどのような理由で定められたのか原案よりも分かりにくくなっていますが、裏を返せばかなりシンプルで分かりやすくなっています。2006年の惑星の定義は「一般の人々が簡単に理解できる定義を作る」という善意が少なからず反映された結果シンプルなものになった一方で、数値で定義されていないことが問題となりました。今回は複雑な定義に疎い一般の人々と、定量的な定義を重視する科学者の両方に配慮した内容であると言えます。 なお、要件bでは、天体がどのような物質でできていても球形になると考えられる質量の下限値が設定されています。太陽系最小の惑星である水星の質量が3.3×10の23乗kgであることを踏まえると、十分に余裕があります。 また、最後の定義では衛星が惑星と区別されていますが、これは一部で提案されている惑星の定義において、地球の月のように比較的大きな衛星が惑星として扱われていることに対応したものです。さらに、太陽系外惑星系の命名に関するIAU作業部会の意見を踏まえ、要件aを満たさない自由浮遊惑星は惑星ではないとしています。ただし3氏は、自由浮遊惑星は要件bと要件cを満たす天体であるべきとも提言しています。 この定義案は、2024年8月に南アフリカ共和国のケープタウンで開かれる予定の第31回IAU総会で発表されます。今回はあくまでも案の発表であり、実際に投票による議決がされるわけではありませんが、この案そのものや改善された案が数年後の総会で実際に議決される可能性は十分にあります。 2006年の惑星の定義の議決の時には、透明性や公平性の問題が少なからず指摘されていました。定義案の内容は総会の開始時まで会員には知らされず、審議が行われたのは2週間という短い会期中だったことに加えて、対面での投票が義務付けられていたため、投票に参加できたのは9000人以上の会員のうちわずか424人だったことがその理由です。 一方で、今回の惑星の定義は事前に提案されていますし、IAU総会の議決では電子投票も認められるようになったことから、より高い透明性の下で定義が決定されると3氏は期待しています。