音声ガイド制作者が見た成田凌主演「雨の中の慾情」 さまざま不思議なことが起きる映画を出演者自身がナレーション
出演者自身がナレーション
今回は、音声ガイドのナレーターを映画内で「靴屋」役を演じている松浦祐也さんにお願いしました。ありがたいことにご本人たっての希望もあったので、モニター会の終わりに、「登場人物である靴屋さんがナレーションするという案はどう思う?」と視覚障害のあるお二人にきいたところ、「作品そのものが不思議な映画なので、きれいに読むナレーターさんじゃない方が雰囲気に合うかもしれない」というご意見をいただいたので、松浦さんにお願いしました。ちょうど30分ほどたったところに、スローモーションのおもしろいシーンがあります。登場人物のエックスが商店主たちに追いかけられて、羽交い締めにされるまでの様子を描いているのですが、人々の声などは入っていないため、視覚を使わずに鑑賞すると、タンゴ調の音楽が流れているだけ、という状況になります。その部分は、松浦さんに自由にやってくださいとお願いをしたところ、そのシーンにぴったりの雰囲気で読んでくださいました。この部分だけでも聞いてほしいくらいです。ちなみに、このシーンには靴屋の店主である松浦さんも出ています。音声ガイドとしては、こんな感じです。 「横から靴屋の店主。幅跳びのように飛んできて、つんのめって消える」。もしかしたら、「俺が横から飛んできて、つんのめって消える」でもいいかなーと思ったりしましたが、そういう冒険はまた次の機会に……。 さまざまにおかしなことが起きる映画でしたが、ラストのところで、福子が壁に貼られた義男が描いてくれたヌードのスケッチを見つめるシーンがとても好きです。なんと表現しようかと迷いましたが、どストレートに「寂しそうな目で見つめる」としました。それ、松田(筆者)の主観では?とおっしゃる方もいるかもしれませんが、ここまでくれば、私が何と表現しても見ている方の中にそれぞれの福子の表情が表出されているのではないかと考え、どストレート表現を選びました。時に、音声ガイドユーザーは私の言葉など聞いていないことがありますから。 松浦祐也さんの音声ガイドナレーションに興味のある方は、UDCastというアプリを映画館で試してください。
音声ガイド制作者 松田高加子