「宇宙のフェラーリ」 人工衛星 地上落下の可能性も
「宇宙のフェラーリ」エンジン燃料を使い果たす
地球を回る人工衛星のうちでも最も低い軌道を飛び、「ひれ」のある流線型の外見から「宇宙のフェラーリ」とも呼ばれる科学衛星「GOCE」がエンジン燃料を使い果たし、10月中旬にも地球に落下することを、欧州宇宙機関(ESA)が発表した。大気圏への突入の際には、重さ約1トンの機体のうち4分の1ほどが燃え残り、数十個の破片に分裂して地球上に落下するという。 GOCEは2009年3月にロシアの基地から打ち上げられた人工衛星(全長5.3メートル、直径約1メートル)だ。地球表面の重力分布をできるだけ精密に計測しようと、約260キロメートル上空の低軌道を周回する。この高度は、一般の人工衛星(高度600~800キロメートル)はもとより、約400キロメートル上空を飛行している国際宇宙ステーション(ISS)よりも低い。 そうした低高度の領域には、わずかながら大気の分子が存在し、空気抵抗も生じることから、GOCEの機体の形を先細りの八角形にして抵抗をなくし、翼のような2枚の「ひれ」も付けている。さらにイオン推進エンジンを常に噴射して、高度を維持している。 当初GOCEは、20カ月間の飛行計画でエンジンの燃料であるキセノンを約40キログラム積んでいたが、大気の空気抵抗を増す太陽活動が予想よりも低調だったことから、燃料の消費が少なくて済んだ。そのため衛星寿命を延長することができた。そのおかげで、2011年3月11日の東日本大震災では、地震動による音波振動を軌道上で捉えることにも成功した。2012年8月からは地表の観測精度をさらに高めるために、高度を約224キロメートルにまで下げて運用を続けていた。
40~50個の破片が地球上に落下?
しかし、その燃料も近いうちになくなり、枯渇してから約3週間後には地球に落下することを、今月13日に欧州宇宙機関が発表した。落下の時期について、GOCEのミッション責任者は「10月16日か17日の可能性が最も高い」とみている。落下する機体の大半は高度75キロメートルまでに燃え尽きるが、残った250キログラムほどが40~50個の破片となり、地上に落ちる可能性があるという。