パリの「観光地価格」は高すぎる。26歳以下の若者は優遇されるも、強気な「二重価格」に批判の声
◆美術館やモニュメントの入場料も大幅な値上げへ
パリは文化やエンターテインメントに恵まれた素晴らしい街ですが、物価の高さは美術館やモニュメントの入場料にも影響しています。 例えば、パリのシンボルであるエッフェル塔では、2014年から2024年の間に最上階に行くためのチケット価格が73%も上昇しました。現在の値段は35.3ユーロ(エレベーターでアクセスする場合、約5700円)ですから、大人2人で訪れれば、日本円で1万円以上にもなります。 それだけではありません。2023年にはルーブル美術館の入場券が17ユーロから22ユーロに上がり、凱旋門とヴェルサイユ宮殿、カタコンブへの入場料も2014年比でそれぞれ40%、68%、140%の値上げとなりました。 ところがパリの有名観光地では、フランス人にも観光客と同じ一般料金が課せられています。多くの美術館では「26歳未満のEU市民は無料で入場できる」という特別待遇がありますが、大人のフランス人であれば外国人と同じ料金を支払わなければなりません。 値上げの背景には、エネルギーコストや人件費の高騰、さらには五輪開催といったさまざまな要因があります。しかし現実的には、高すぎる入場料に現地フランスの人々も疲れ切っています。「全てが値上がりしているので驚かないが、うれしくない」「もう行きたくない」と、多くの人々が人気観光地から遠ざかっているのが現状です。
◆二重価格は差別につながりかねない
「二重価格」に関しては、パリ市民からも賛成と反対、2つの意見が上がっているようです。 2023年3月には、「二重価格」の賛成派でルーブル美術館の値上げに反対する懇願書を提出したパリ市民の1人が、「私たちは既に税金を通して、間接的に施設へ貢献しているのですから」と、外国人旅行者と価格差を設けない同美術館を批判しました。しかしルーブル美術館側は、「2022年にはフランス人観光客の2人に1人以上が訪れている」と反論。払える人が払い、若者・失業者・障がい者とその付添人・教育者を無料にするという方針を変えずに、一斉の値上げに踏み切りました。 一方で、二重価格の導入が「差別につながる」という意見もあります。差別は確かに存在しますが、その差別に対して厳しい目が向けられるのもフランスの現実です。また、パリで暮らす外国人の数も非常に多いため、現状では旅行者なのか定住外国人なのか区別のつけようがありません。身分証の提示を義務付けた場合でも、不正が起こりやすいことが指摘されています。