“謎の航路”が5年ぶりに復活! 「イースタンドリーム」が見せる異国情緒と運賃倍増、日韓関係改善の象徴になれるか?
イースタンドリーム航路の現状と課題
この2009年に、新たに登場したのがイースタンドリームの境港発・東海経由・ウラジオストク行き航路だった。 5年前、境港から船出したイースタンドリームの日本人乗客は10人ちょっとだったと記憶しているが、筆者以外はすべてウラジオストクまでの乗船者だった。しかもその大半がウラジオストク駅からシベリア鉄道に乗ってモスクワに向かい、そこでベルリンやパリなどにつながる国際列車に乗り継ぐ「ユーラシア大陸横断鉄道旅」を目的とする旅人だった。 しかし、今そんな旅人の姿を見つけるのは難しそうだ。その理由は明らか。まず、航路再開が日本ではまだ広く認知されていない。何しろイースタンドリームの日本語予約サイトが存在しないのだ(2024年11月中旬現在)。それは韓国語と英語のみで、筆者は英語版サイトで運航タイムテーブルが変更された(就航当時は東海発が金曜日だったのが、10月以降は木曜日に。それにともない境港発も土曜日に)ことを初めて知ったほどだ。 日本からの申し込みは基本、境港の「境夢みなとターミナル」内にあるトゥウォン商船の日本法人・イースタンクルーズ&フェリーに電話で行う。この情報を得たのも、境港管理組合のサイトの「国際定期フェリー」ページをたまたま閲覧してであった。
シベリア横断旅行への夢と現実
そしてなんといっても2022年に始まったロシア軍のウクライナ侵攻の影響だ。ロシアと西欧諸国を結ぶ国際列車の運行が休止され、ロシアから「非友好国」に指定された日本からの同国渡航がかなり困難な状態になった。 イースタンクルーズ&フェリーに「日本人でもウラジオストク行きのチケットは買えるのか」と尋ねてみたところ、 「日本人だからといってウラジオ行きの切符を売らないということはありません」 とのこと。ただ「申し込みの前に日本のロシア大使館領事部に一度お問い合わせすることをお勧めいたします」というなんともグレーな回答だった。欧州への足としてのイースタンドリーム活用は、少なくともウクライナ紛争が解決するまでハードルが高そうだ。 ただ、ソウルへの「日本海ルート」という使い道はある。 5年前、筆者は港から徒歩10分ちょっとの東海駅で海列車(ぱだよるちゃ)という観光列車に乗り江陵(カンヌン)へ。そこからKTX(韓国高速鉄道)に乗り換えてソウルに向かった。翌年(2020年)、東海とソウルを結ぶKTXイウムが開通。今回初めてソウルから乗車したが、乗り換えなしで2時間40分の快適な列車旅であった。 さらにイースタンドリーム下船後、境港からJR境線の「鬼太郎列車」で米子へ。米子から寝台特急「サンライズ出雲」で東京へ。ソウル駅から東京駅まで44時間ちょっとのレール&フェリーの旅を実施したが、なかなか楽しかった。東京駅から 「サンライズ + 鬼太郎列車 + フェリー + シベリア鉄道」 で欧州。そんな夢の鉄道旅行ができるのはいつの日か。それが可能になるとき、境港~東海~ウラジオストクは「謎の航路」ではなくなる。
カナマルトモヨシ(航海作家)