“謎の航路”が5年ぶりに復活! 「イースタンドリーム」が見せる異国情緒と運賃倍増、日韓関係改善の象徴になれるか?
31年の歴史を持つ船体
5年前(2019年)、筆者はこのイースタンドリームに乗って境港から東海まで、今回と逆コースの船旅を行っている。 境港と東海を結ぶ航路は15年前(2009年)の6月29日、韓国の海運会社DBSクルーズフェリーによって開設された。開設当初からイースタンドリームが使用されていた。1993(平成5)年10月以来、鹿児島から奄美大島などを経て沖縄(那覇)との間を往復していたマリックスラインの「クイーンコーラル」という日本の貨客船だった。2008(平成20)年の引退後、DBSクルーズフェリーに売船され、翌年からイースタンドリームとして日本海にその活躍の場を移したのである。つまり2024年10月で船齢31年を迎えた「ロートル船」なのだ。 筆者が初めてイースタンドリームに乗ったのは、くしくも航路開設10周年にあたる2019年6月29日だった(特にそれを記念する催しもなかったが)。しかしこの4か月後の同年11月11日、境港~東海航路は突然休止した。 筆者の乗船直後、輸出管理をめぐる対立や元徴用工問題などを背景に日韓関係が悪化。乗客の大多数を占めていた韓国人乗客が激減したことで運休に追い込まれたのだ。さらに追い打ちをかけたのが2020年のコロナ・パンデミック(世界的大流行)だった。国境を越えた活動が世界的に難しくなり、DBSクルーズフェリーは同年4月に廃業に追い込まれるにいたった。 その後、イースタンドリームを譲り受けたのが、やはり韓国のトゥウォン商船(英語ではDUWON SHIPPING)である。やがてコロナ禍が一段落し、韓国も尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の誕生とともに日本との関係も好転。日韓航路の復活を熱望していた鳥取県の熱心な働きかけもあり、トゥウォン商船がこの8月3日、5年ぶりに境港~東海航路を再開したのだった。
サービス改善も運賃は倍増
航路復活から2か月後。韓国を訪れていた筆者は、5年ぶりにイースタンドリームに乗って帰国することにした。一度乗った船ということもあり、アウェー感に満ちた船内を見てドン引きするよりも、「懐かしいなあ」という気持ちが先に立った。 5年前との違いを最も感じたのは、 「レストランのサービス」 だ。以前、朝は簡単なビュッフェで、夜もちゃんとした定食の提供はなかった。今は3種類のメニューしかないとはいえ、ビビンパ定食などをしっかりと食べられる。しかもそのボリュームの多さに驚く(特にモーニングセット)。 船内は壁に描かれる妙なイラストが少し変わったくらいで、他は以前の面影を濃厚に残していた。船内案内図もDBSクルーズフェリーのものをそのまま使っていたし、航路図も島根県竹島がハングル文字で独島(トクド)と書かれ、その南側に国境線を引いたものを使っているのも同じだった。ただ、 「運賃が倍以上」 になっているのには閉口した。5年前、境港~東海のエコノミークラス運賃は1万2000円だったが、今回は日本円にして約2万5000円もした。お世辞にも豪華とはいえない設備でこの価格は、あまりにもコスパが悪すぎる。