「年金月20万円の68歳元サラリーマン」定年後は物欲がなくなり浪費せず、食欲が落ちて外食もしない、質素で静かな暮らしも…老後破産に追い込まれたワケ【FPの助言】
老後の支出の現実と、日本の高齢者の生活水準
鈴木さんのように、年金で生活を賄っている日本の高齢者は多く、国民年金や厚生年金を受け取っている方々も、生活水準を維持するには苦労しています。日本の年金支給額は毎年調整されており、物価が上昇する一方で、年金収入は増えず、実質的には目減りしている状態です。そのため、現役時代と同じ生活水準を保とうとすると、どうしても貯金や追加収入が必要になります。 しかし、高齢者の多くは、現役時代と同様の支出が普通だと感じ、支出の見直しが後手に回る傾向があります。鈴木さんも、退職後の数年間は支出の管理が甘く、月々の小さな出費が積み重なることに気づけませんでした。特に、医療費や予備の生活費を念頭に置かないままでいたことが、破産に拍車をかける結果になりました。 統計によれば、70代の高齢者の平均医療費は年間20万円以上に上るケースも少なくありません。加えて、老後に備えた家の維持費や家電の買い替えといった予期せぬ支出も、家計に大きな影響をおよぼします。現役時代には気づきにくいこれらの支出が、老後破産のリスクを高める原因となるのです。
破産を防ぐための「賢い家計管理」と「安心の備え」
鈴木さんの経験から見えてくるのは、老後破産を防ぐには、「年金だけでなんとかなる」という思い込みを捨て、支出の見直しとリスク管理が必要だということです。医療費の増加を見越した貯蓄。突発的な出費に備えた積立金を設けること。これらが老後の安定した家計を保つために重要です。家の修繕費用や家電の買い替えを見越し、少額でも定期的に積み立てておけば、予期せぬ出費への対応が可能になります。 「これからの生活でどんな支出が増えるか、もっと早く考えておくべきだった」と後悔する鈴木さんの言葉は、これから老後生活を迎える多くの方にとって重要な教訓となります。老後の生活設計では、現役時代と同じ感覚でいると、見逃しがちな支出が家計を圧迫するリスクが増大します。健康管理にも気を配り、できるだけ医療費の負担を抑えるための取り組みも欠かせません。 現役のうちから老後の家計を見据えて少しずつ支出の見直しを行い、積極的な資産管理を行うことで、理想的なセカンドライフに近づくでしょう。 〈参考〉 金融庁/消費者庁/厚生労働省(自殺対策推進室)/法務省 「多重債務者対策をめぐる現状及び施策の動向」 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/saimu/kondankai/dai22/siryou1.pdf 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」 https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/books/data/2020/2020_hasan_kojinsaisei_1.pdf 波多 勇気 波多FP事務所 代表ファイナンシャルプランナー
波多 勇気