第35回高専プロコン奈良で開催、競技部門で松江高専が悲願の初優勝
全国高等専門学校連合会は10月19日・20日の両日、第35回全国高等専門学校プログラミングコンテスト(高専プロコン)を開催した。今年のテーマは「まほろばの地で古都ロジー開花」。奈良工業高等専門学校を主管校に、奈良市の「なら100年会館」に全国の高専生が集った。課題部門で最優秀賞を獲得したのは、鳥羽商船高等専門学校の「Triplean-インバウンド対応・清掃支援システム-」。自由部門では香川高等専門学校 詫間キャンパスの「uni」が最優秀賞に輝いた。また競技部門では、松江工業高等専門学校のチーム「回鍋肉」が優勝した。 大会は、1日目の19日に課題・自由部門のプレゼンテーション審査とデモンストレーション公開。競技部門のファースト、セカンドステージがそれぞれ行われた。2日目の20日は、課題・自由部門のデモンストレーション・マニュアル審査と競技部門の敗者復活戦、ファイナルステージがそれぞれ行われた。課題部門は今回「ICT を活用した環境問題の解決」がテーマ。予選を通過した20チームが参加。自由部門でも20チームが参加した。 課題部門で最優秀賞を獲得した鳥羽商船高専の「Triplean-インバウンド対応・清掃支援システム-」は、公共トイレやゴミ箱などの設備を効率的に清掃・管理するシステム。情報提供、清掃員募集、施設の状態検出の3つの側面を持つ。具体的には、観光客向けにトイレやゴミ箱、喫煙所などの情報提供を行う「施設検索アプリ」、地域住民から清掃員を募集する「清掃員募集アプリ」、汚れた施設を検出する「施設状態分析機能」を連携させたもの。訪日観光客から得られる寄付を元に、清掃作業の対価を支払うビジネスモデルを想定している。 自由部門で最優秀賞を獲得した香川高専 詫間キャンパスの「uni」は、映像や風の感触、音だけでユーザー同士の共感を呼ぶコンテンツを提供するシステム。言葉による説明を必要としないのが特徴だ。例えば、システムの前に利用者が立つと目の前に蝶が現れ、タッチすると花が咲くといった具合だ。他にも多くのコンテンツによる体験ができ、試行錯誤や驚き、発見を通じて共感や相互理解を促進する、というもの。布にファンで風を送ったり3Dサウンドを採用するなどでリアリティーを醸成する工夫を施した。 「シン・よみがえれ世界遺産」と題した競技部門は、2011年に開催された舞鶴大会の「よみがえれ、世界遺産」をブラッシュアップしたもの。全58チームが参加した。競技は、奈良という土地柄を反映し文化財の修復をモチーフにした。最初に、修復前の文化財として、複数のピースから成るボードと、修復道具として、複数の抜き型が与えられる。任意の抜き型をボードに適用すると、抜き型と一致したピースだけが抜け、抜けたピースを上下左右いずれかの方向から詰めて補う、という作業を繰り返し、「文化財を修復」するという競技だ。できるだけ少ない手数でできるだけ早く「修復」したチームが勝利する。競技開始とほぼ同時に修復結果を提出するチームも数多くあり、レベルの高さがうかがわれた。 優勝した松江高専は、1回戦こそ八戸高専の849手に次ぐ1050手と2位通過だったものの、準決勝では3394手で余裕の1位通過。決勝戦でも1万2180手と、1万4042手で2位の徳山高専を引き離し圧倒的な強さで優勝した。これまであと一歩のところで何度も苦杯をなめた松江高専。次回高専プロコンの主管校ということもあり、気合の入った戦いを繰り広げた今回、初優勝を飾った。(ITジュニア育成交流協会・道越一郎)